『SPECTER』再演
2019.
3.29-31 大阪 森ノ宮ピロティホール
4.19-21 東京 本多劇場
https://www.west-patch.com/event/specter2019/
4.20夜 J列センター上手寄りにて
※少なくともTRUMP、SPECTER、マリーゴールドネタバレ
本多劇場来るのが5年ぶりだった。下北沢の駅が私の知ってる下北沢じゃなかったし。本多劇場は「阿呆の鼻毛で蜻蛉をつなぐ」や「見上げればあの日と同じ空」で来たことがあったんだけど、絶妙なキャパのわりに全然2.5とか若手俳優系の舞台で使われないね。アミューズとかワタナベとか、常連しか借りられないのかしら。良い劇場だと思うからもっと来たいんだけど。
ところで本多劇場って、こけら落としが「秘密の花園」って公演だったそうな。
キャパシティ補助席含めても400席くらいだから東京だけでもMAX2400人しか生SPECTER浴びられないの信じられない。前方5列くらいの補助席、ガチパイプ椅子で140分キツそうだなと思う。
私の直後にパンフ売り切れてたので、開演前に買って良かった。パンフ切らしまくってたみたいだけど最近の舞台はパンフ切らすの流行ってんのか。なお以前買えなかった戯曲集は余裕で買えた。
スモークの量がすっごい。ロビーまでスモーク流れこんでもくもくしてるし。劇場天井のライトの輪郭が見えないし。見える景色はすごく遠く感じて、それでいて舞台上の世界と客席が繋がっているようでわくわくした。
再演の演出
実に"再演らしい"再演だった。直前に初演のDVDを流し見してたんだけど、ストーリーや空気感に全く変わりはなく、DVDで見たものが生で見られた感動があった。
ただ、ほぼ全ての立ち位置が左右逆転してた。末満さん刀ステの方でも再演で上手と下手逆転させてたって風の噂で聞いたんですけど。
劇場の都合とかも一瞬考えたがあまりに綺麗に上下逆だから、ああこれは、「再演」という演出なんだなと思った。
ただ全部が逆ではなくて、サトクリフがネブラ村の人を崖から突き落とすとことか、繭期の子らのシーンは初演そのままの部分が多かった気がする。気のせいかも。
再演に感じたのは、この舞台には瑞々しさがない、落ちる寸前の枯葉のように乾いている、ということだった。
ギャグシーンほぼほぼ全カット。自分の感情がプラスに振れることがなかったから、抑揚に欠ける印象はあった。ただ、あれだけ気の狂ったギャグでTRUMPダリちゃんを登場させ、ギャグシーン大幅カットで露出NGのキャストがいた*1NU版でもなお気が狂ったギャグは諦めなかった末満さんが、"わざわざ面白くしない"ことがあるか?*2
グレコやバルトロメは比較的ギャグ枠だったけど、笑わせようとするギャグではなく、繭期の滑稽さをただ表しているだけのようにも見えた。
笑いの潤いを無くし、わざと観客を干からびさせたのかと思う。これが亡霊の村、ネブラ村なのだと。
でも「もしかして……私?」とクラなんとかはどっち!?のシーンが好きすぎて、見たかったなーーー
キャスパレが鬼のようにカッコよくて、みんな劇団patchくんがYouTubeに上げてるやつ見て!!と思ったけど、観劇後見返したらやっぱ生で見てくれ…ってなってしまった。萬里くんが台に飛び乗るとこかっこいいよ萬里くん……。
終盤のぐちゃぐちゃするところ、後ろで繭期の4人が行進するようなとこ、気持ち悪い。サーカスのような…めちゃくちゃ不気味で、特に下手に運ばれながら手を振ってる女の人?がホラーすぎて夢に出そう。
キャストとキャラクター
キャスティングは現patchの子達によるものらしいですね。*3 キャスパレ構成も中山くんや星璃くんだし、patch主体で作られてるのはなんだかすごく良いなと思った。
「そしたらキャスティングの差分は深読みする必要ないかな」と思ったけど設定逆輸入の可能性は大いにあると思います。末尾にキャスト推移記載する。
石舟さんの性格が結構変わってて驚いた。髪型もオールバックになってるし。*4
演技の問題かもしれないが初演より感情表現豊かで、萬里に事件報告する際に萬里に「なんで楽しそうなんだよ」と言われる程、若干サイコというか陽気なキャラになってる。
臥萬里くん、衣装がかなりリリーに寄せられてませんか。初演見た時全然思わなかったのに。
萬里にはあまりキャラ変を感じなかったから、余計に臥萬里と石舟の関係性が変化したなと思う。元々石舟のが上手な感じはあるものの、初演はドSとドMでプラマイゼロになってかなり対等な感じがしていたんだけど、その設定が消えた再演は明らかに石舟のが上手って感じがした。「面白い人だ」って割と上からじゃない?
しかし萬里くんはキャラ変を感じなかったとは言ったが、奴隷欲しがり癖が消えてカッコ良さが増してしまったな…。
シャド(三好くん/初演石舟)がクラウス(中山くん/初演萬里)を刺し殺そうとするところは、現実の私の胸が痛くなった。カテコの並びがセンターから上手に向かって、臥萬里、石舟、シャド、クラウスだった気がするんだけど意図的かな…。
初演ノームだった再演ヒューゴも、お前が殺そうとしたのはかつてのお前だ…となってしまうし、初演ヒューゴの再演臥萬里を考えるとお前が殺したのは過去のお前だ…となってしまうし、かつてのノームが萬里を殺すのか…となってしまうし、いやここ複雑すぎる。
ところでノームは今回ちっちゃくて可愛かったです。ちっちゃい身体でクラウスと一緒にハリエットを守ろうとしてるのが、おねえさんグッときちゃうんだ…。
キャラクター変化としては、繭期の少年たち4人もそれぞれ個性が強くなってて良かった。
事前発表されたグレコのキャラクタービジュアルが怖すぎて生で見たら泣くかもしれんと思ってたけど、言動が可愛いので相殺されたかもしれない。いややっぱめっちゃ怖かったわ。初演では影薄めであまり印象がなかったが、一番キャラ変して強烈な子になったな。
衣装は全身白なのに、ディテールが細かいとこんなに映えるのかと。襟とか、どんなパターン引いたらああなるの。
石舟の記録報告では死亡扱いだったシャドが、カテコで死亡者に被らされる仮面を被っていなかったあたり、ほぼ確実に今後に影響してくるでしょ。
てかシャドめちゃくちゃ良かった。SPECTERでは臥萬里殺害シーンと一二を争うくらいしんどいのがシャドの殺戮シーンなんだけど、本当に悲しくて苦しくて。
ローザが殺されないように、またカルロがローザを殺させないように、カルロを刺したシャドへの「君は優しいな…」というセリフと、ローザを殺そうとするシャドの「俺に君を殺させないでくれ」というセリフは完全にマリーゴールドのアナベル。
三好くん、すごく声が通るし良い演技してて大変良かったから、生き残ったシャドでまた出てほしい。
臥萬里殺害シーンは、萬里が倒れる角度が初演が舞台と垂直だったのに対して再演は平行で、刺す人が増えたのか?エグすぎて心臓冷えた。ここ、戯曲集見たら描写がエグすぎて泣いた。
台詞として印象的なのが、クラウスの「じゃあ死ねばいいじゃないですか」の「あーいいなー簡単に死ねて」という雰囲気の凄さ。
バルトロメの「ごめんね、繭期ってのは自分たちではどうにもならなくてさ」の抗えない理不尽さ。
ところで気になるところとして、ロダンに何故女性をキャスティングしたのかというところ。母さん設定になったのかと思ったら父さんだったからびっくりした。
あと、カルロの髪色が違和感を覚えるほど露骨に周りから浮いてたこと。本当に浮いてた。そこだけポッと明かりが灯ってるみたいに。死んじゃったけど。
追加変更点まとめ
1回しか見てないので気付いたとこ、所感含め記録しておきたいとこだけ。曖昧なとこあり。変更後セリフはニュアンス。
・初演DVD収録だった繭期の子らのクラン脱走時のシーンが冒頭に追加。キャストをシークレットにする必要がなくなったからか?
・死者の葬列シーン追加。
・石舟の武器が短剣から槍に。
・最初のカルロの家のシーンでの臥萬里と石舟の会話
石舟「(それだけギルドに評価されているということです。)私は光栄に思いますよ」→「ベストパートナーです」
萬里「どうせなら歌麿のヤツが良かったぜ」→「どうせなら歌麿の犬っころが良かったぜ」
石舟「相変わらず素直じゃない」→「相変わらず面白い」
石舟「歌麿さんは今、グレコ家の件で〜」→「歌麿さんは今、春林師匠とグレコ家の件で〜」序列的には春林が一番上なのか?
・カルロの家破壊の際、誰かの台詞が「カルロには気の毒だが」に変更。カルロとは普段仲が良いことが示される。
・家を壊されたカルロ「僕のお気に入りの家具が…」→「僕の手作りの家具が…」
・サトクリフが村人を崖から突き落とす前の追加台詞「俺の弟のオズなんかは少し先の未来が見える。まぁ精々5分から10分程度の話だがな」
・萬里のクラナッハへの台詞「野暮ったいくせにやることやってんだな」が削除。再演クラナッハ、小綺麗だから言っても説得力ないよなと思ってたけど。
・初めてクラナッハの小屋でのシーンの最後、何も言わなかったクラナッハが、笑うように変更(?)
・ローザがTRUMPについて語るシーンでローザの父と教団関係者、血盟議会の描写が追加。あの1分足らずのシーンのためだけに血盟議会の衣装用意したのかグランギニョルマリーゴールドの使い回しなのかは不明。
・リリーの話をする萬里の台詞「俺には妻がいた」→「俺には大切な人がいた」
・萬里のヴァンパイアハンターになった理由から「人の世に害をなす吸血種を皆殺しにするため」が削除。「二度と目の前で誰も死なせない」ことが第一理由になる。
・クラウスとクラナッハの会話でクラナッハが花の名前を挙げていく際、いくつか抜けあり。4/20夜回では紫蘭、マリーゴールド、リリーは抜けてたと思う。最後のリリーは明らかに無くしたと思われるが他はミスか判別つかなかったので4/19観劇の方に聞いたところ、4/19夜も少なくともマリーゴールドとリリーは抜けてた模様。
・クラナッハにどうして僕に協力する?と問われた時のクラナッハの「退屈しのぎです」が削除(?)
・ハリエット死亡時のクラナッハの台詞から「悲しいさ」が削除。本当に悲しんでいるのかがより分かりづらくなる。
・クラナッハの最後の台詞で「あの百合の花のように美しい花を」が削除されてた(?)
・ラストシーンで、死んだ人間の名前を背負うのかと問う石舟へのノームの返答「亡霊とは、死んでいった者たちが生きていく者に託す想いだ」→「違うよ。僕を守ってくれた人の名前だ。だから僕はこの名前で誰かを守るんだ。」萬里の意志を明確に継いだ形に、また自分を亡霊と称していた頃からの成長を感じさせる内容に。
・死亡者に仮面を被せる演出追加。ダブルカーテンコール時にも死亡者は仮面登壇。シャドは仮面無し。
初演再演キャスト推移まとめ
キャスト:初演→再演 (敬称略)
中山義紘:臥萬里→クラウス
三好大貴:石舟→シャド
松井勇歩:シャド→臥萬里
竹下健人:クラナッハ→石舟
井上拓哉:ノーム→ヒューゴ
星璃:サトクリフ→カルロ
吉本考志:バルトロメ→トルステン
COCOONが楽しみですね。
SPECTER初演の映像視聴後に書いたとりとめのなさすぎる感想文↓
http://tomiharu-stage.hatenablog.jp/entry/2017/08/18/SPECTER
★★★★