芸術に拍手

全記事ネタバレ祭り。レポと感想と妄想が大渋滞起こしてる。

【映像】文豪とアルケミスト 綴リ人ノ輪唱

 

『文豪とアルケミスト 綴リ人ノ輪唱』

2020.

9.12-22  品川プリンスホテル ステラボール

9.25-27  京都劇場

文学作品を守るためにこの世に再び転生した文豪たち。 館長に導かれ、憧れの芥川龍之介と出会い、喜びに浸る太宰。 しかし、そんな平穏を壊すかのように、北原白秋の『からたちの花』が侵蝕され、 作者本人が自身の作品に“取り込まれる”という、未曾有の事態に。 北原とその作品を救うべく、太宰ら文豪たちは潜書をするが――

http://bunal-butai.com

 

 

9.25 東京千秋楽配信 にて

 

 

 

当たり前のようにネタバレ。文アルミリしら(アプリDLはした)、1,2視聴済み。

 

 

 

 

初日がズレるという未曾有の事態。コロナ許すまじ。

今回こそは行きたかったけど、チケ代に怯んで配信という選択をしました。

そしたらなんか、文劇終わりっぽくて泣いてる。

すごい最終回感。というか最終回。まだまだ文豪いるし、勝手に続くもんだと思ってた私が愚かだった。遂に一度も生観劇できなかった。後悔している。

今回の舞台セットめちゃくちゃカッコイイのよ。退廃的で。だからじっくり隅々まで見たかった。後悔。

後悔だらけだから、Blu-ray買いました。このご時世珍しい、物販の充実ぶりなのでアニメイトでブロマイド買います。

そういえば、初めてマウスガード有りの舞台を見ました。いくら透明言えど、やっぱり無い方がいいなあ。封神演義2も有るのかなあ。やだなあ。

 

 

 

東京公演前半辺りにおもむろにTwitterで「文劇3」と検索したら、予測検索に「地獄」と出てきて、混乱した。あの希望に満ち溢れた文劇が?どうした?文劇3が初文劇の友人に「地獄だったんですけど今までもそんな感じだったんですか?」と言われたけど「いやそんなはずは」と返すしかなかった。あの文劇に何が起きているのか?地獄好きの私は絶対に見る意志を固めた。

結局、東京千秋楽配信最終日の終了6時間前に駆け込み視聴した。駆け込みしたくせに、時間ギリギリまで通しで2回見たし、EDリピった。

 

地獄の噂は真であった。

 

待って、待って。なぜ、人が死ぬ。しかも割とえげつない殺し方だ。串刺しはよくない。乱れ撃ちはよくない。

中也さんの死に際が切なすぎて、なんだか落ち込んだ。配信だけど、悲しい顔のひとつに並べてほしい。

死ぬのが生前の没年順とかいうの、創作者ってそういうのやりがちだよね。申し訳ないことになぜかグッときてしまうものがあるのよ。いやはや、どうして文劇で人が死んでるんだ…?

 

そもそも、既に一度転生してるはずの太宰がすべて初見の顔してて、2で会ってるはずの芥川と朔太郎が初見の反応してるってどういう事なんでしょう。

あれだけ思い思われしてた太宰と芥川について、太宰側は3が初対面であるかのような会話をする切なさよ。前回の転生の記憶が無い。つまり文劇1,2時空から、全員一度は死んでる(「絶筆」というらしい)ってこと?でも芥川さんはラストで「また出逢えたね」と言うし、途中の会話でも前回の記憶があるようなないような反応でもあるような。要確認。

芥川さんは分からないけど、太宰は確実に記憶無くしてるんだよね。一度芥川作品が潜書されてるのに、太宰が「潜書された本は望まれなかった作品」だなんてことを信じるはずがない。

"輪廻転生"が在ると明言されている作品だが、何だろうな、この寂しさ。

でも太宰はポジティブなんだよな。芥川先生が転生しててまた会えるかもしれない、と。例え記憶がなくなっても「俺は行くよ」、と。そこが救いであり、明確に"ハッピーエンド"だと分かるラストだった。太宰が主人公で本当に良かった。地獄の中に、たくさんの強い魂の輝きを見たなあ。

ところで初演で太宰に救われた芥川(ヒロインかと思った)。3では太宰が芥川に救われる構図に見えるのは私だけか?琴線に触れる。輪廻しているような気がする。初演見返したい。

 

 

文劇3、たくさん良い言葉が詰まってた。特に何かしらの創作者には刺さるであろう。

全体主義と"個"の話。一応アプリもチュートリアルだけやった私すら「あれ館長ってこの人だっけ」と思うくらいなんだから、ユーザーはもはや、明らかに最初から黒幕と気付いていてもおかしくないのでは?それとも刀剣の本丸みたいに、各々色んな帝國図書館があるからと納得していた?

館長に「文化芸術を全て消して去ってみろ。その世界に何が残るのか」(ニュアンス)という白さんの叫びは、確かに今の風潮にも言えることで*1。やはり人は芸術なくして、真に豊かにはなれないのだと強く認識させられた。私も軽いいち創作者ではあるから何となく分かるけど、「書けなくなったら死ぬ」は本当だ。

 

今回の潜書は「からたちの花」と「怪人二十面相」。もう一つ、白さんの作品が潜書対象になったけどタイトルは明かされず。白さんの「この道」も出てくる。

北原白秋、懐かしい、優しい気持ちになれると比喩されると読んでみたくなる。こういうところが文豪モチーフの作品の良いところだと思う。文豪が亡くなっても作品は残り、作品に出逢い、出逢った人の中で生き続ける。これが文豪の魂。

 

 

キャラについて。

私本当に本当に本当ーーーーに、くぼひでさんの芥川さんが大好きなんですけど、今回も最高に素敵な物腰と身のこなし、キレのある殺陣、チラ見えどころか割と見える足首、煙草を挟むお綺麗な指先、顎に手ポーズの時に見える手首と筋、最強の顔面であった。文劇皆勤賞おめでとうございます。(乱歩さんもね)  煙草コツコツしちゃうのも可愛いんだけど、カテコでマウスガードちょっとズラして吸う(よね?)果てしない色気に何回かやられた(リピった)。

ネガティブな発言しまくって、太宰にそんなこと言わないでくださいと言われた時の「癖だねぇ」の明るい自虐のような言い方とか、「ライト兄弟よりずっと遠くの世界に飛んでいける」(ニュアンス)の本当に広い世界を見ているような言い方とかがすっっっごい好き。相変わらず文アルミリしらだが、原作の推しも芥川さんになるんだろうか。アニメ見ようかしら。

太宰は素直で愚直でどこまでも真っ直ぐで、本当に可愛い。誰よりも生命力強そうなのに、生と死の境目、薄氷の上にいるってんだから何と不安定な男だと改めて思う。その不安定さが愛しいよ。

萩原朔太郎って北原一門だったんか……。いや全然詳しくないもので……文劇2にソロで出てたのがちょっと不思議だなといまさら思った。若干文劇2の記憶が曖昧だから申し訳ないんだけど、朔太郎、前より強くなったなという印象。

今回のキーパーソンである白秋さん、あのたおやかさでごっっつい二丁拳銃って、どこの性癖向けなんだよ、刺さったよ。元不良シーンがさとちゃんって感じがしてニコニコした(失礼)。前述の「文化芸術を全て消し去ってみろ」の白さんはあまりにも格好良い。

てか文劇3のキャラ、飛び道具多いな。そりゃシューティングゲームにもなるわ。太宰のボタンシャカシャカ引っ掻くようなコントローラー捌きが懐かしい感じで笑った。

ブルズさんは相変わらず衣装もアクションもカッコイイ。髪は全員染めてるんだっけか。お洒落。ブルズさんこそ生で観たかった…絶対目が足りなくなるけど…。

 

 

演出について。

今回もなぜ配信で見た(100億回目の後悔)とばかりに最高の演出だらけだったのは自明。きっとカメラの外でも最高だったんだろうな…。正直「○○年○○没」の垂れ幕演出、辛さと相まって興奮してしまったな…何だこの感情は…。

布の演出とか、生で見たら絶対もっと派手で凄いと感じるんだろうなと思うことしきり。

他の方の感想で見たんですけど、全員絶筆した後の太宰と白さんが回想の中で、突然「文豪とアルケミスト」のタイトルが書かれた台本を手に芝居するシーン。突然あからさまな台本で、配信で見る限り「稽古間に合わなかった故の、演出に見せかけた救済措置なのか?」と思ってしまったんだけど、あそこ肉声で客席ライト点いてるって本当ですか????「客席にライトが点く」。この演出はどこにいっても超重要、絶対に意図があるギミック。客席ライト、現実の台本。つまり文劇の世界と現実の世界がリンクしたってこと。考察したいところではあるが、ちょっとあの辺り何がどう語られてたか記憶があやふやなので要円盤。ともかく配信で見えないところのそういう演出が本当に、やっぱり生で観るべきだった。何度でも言ってしまう。

ところで、何よりとにかく一番大興奮したのがエンディング!!!

主題歌メドレーはズルい!!!!!!

本っっっ当に鳥肌立った!!リピった!!リピれること、配信で見た自分に唯一感謝した!!もうねー、とにかく私は文劇初演の「光ノ先へ」が大好きなんですけど、何が好きって文豪由来の言葉が歌詞中にボコボコ出てくるところと、その歌詞に合わせたOP演出、走り出したくなるようなカッコイイメロディーライン、もう愛しさしかない。ガラッと変化した文劇2の「白き美しき世界へ」のメロディーは切なさ満点で、世界が光り輝いて見える。そしてさらに曲調を変えてきた文劇3の「魂となりて」は、THE文豪感溢れるレトロな雰囲気の中に、強い魂の意志が示されるようなそんなメロディー。愛しさと切なさと心強さとかよ。その作品のためだけに作られた主題歌って良いよね。

「光ノ先へ」が流れた瞬間の文劇そのものの終わりの感覚は悲しみでもあったが、それでもこれに勝る興奮は久しく感じていない。いや本当に素晴らしい。脱帽という他ない。むしろ禿げるかもしれない。久しぶりに禿げるとかいうネットスラング使ったけど、脱帽の上位互換だったのか。

ああ、ラストシーン、「光ノ先へ」じゃないか。

 

他の人の感想見てると本当に細かいところまで作り込まれてるのが分かるから、もっと観たいなあ。見返したいなあ。見続けたいなあ、文劇。

 

 

 

 

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文劇さんはこういう裏方のお話もしてくれるから愛しい。

 

 

 

 

 

 ★★★★

*1:今は多少マシになってるように思えるけど、夏前辺りが酷かった。自粛自粛でどれだけの芸術が消えたことか

黑世界

 

『黑世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~』

2020.

9.20-10.4  東京 サンシャイン劇場

10.14-20   大阪 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

 

 

9.20(雨下) 11列上手寄り

9.21(日和) 2列下手

にて

 

 

 

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備忘録のためストーリーがっつり書いてます。相変わらずネタバレ。

 

 

 

雨下は通路横だし、日和は1列目潰しの最前列だったし、なんだかコロナ禍での私の観劇のチケ運が異常に良い……。

普段の何倍も男性客が多くてびっくりした。1/3は男性だったのではとすら思う。

 

私TRUMPシリーズでリリーが一番好きなんですけど、黑世界発表された時は大暴れしたよね。念願すぎて。

元々「キルバーン」てのをやる予定だったけどコロナで出来なくなって、音楽朗読劇の黑世界をやることになったとか。早くコロナ明けないかな。

そういえば感染症対策は靴の消毒マットまであって完璧だったんだけど、来場者登録だけが分かりづらい!配布された特典マスクに付いてる紙の一番下に小さく載ってた。

 

 

二編通して、音楽朗読劇というからには歌うのは分かってたけど、こんなに動くとは。朗読劇と言いつつかなり動くのは極上文學シリーズくらいかと思ってたけど、それ以上に動いてたかもしれない。

しかも今回は特に照明の演出が目を引いた。多色多彩で、心理描写、血の表現、素晴らしかった。

雨下初日はスタオベなかったけど日和初日はスタオベした。初めて最前列でスタオベした~~気持ちいい~~~。

 

鞘師さんが歌上手くなりすぎてて驚いた。新良さんとデュエット張れるの凄い。ずっと聞いていられる。

リリーのシルエットが最高なんだ。ダンスの手首のしなやかさが最高なんだ。

衣装が今回膝上なんだけど、この"年端もいかぬ少女"らしさよ。ワンピースの腰に切り返しがないのに驚いた。それであのフィット感。コートも凝ってて可愛いしあれを急いで羽織る時のリリーさんの勇ましさが好き。

 

ヴァイオリン&ヴィオラとチェロは生演奏なのだが、奏者さんが出てくるとそわそわしてしまうしチューニングから照明が落ちるのぞくぞくした。

 

 

 

 

~雨下の章〜

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初日は雨が降りました(地元)

全部雨にまつわる話。でも傘は一度も出てこない。

みんな歌が上手い。

雨下の方が、ちょくちょくLILIUMクランの子たちのセリフ出てくるよね。リリーの大切な記憶なのか、でも忘れてる描写もあるからもはや潜在意識なのか。

 

 

1. イデアの闖入者[作・末満健一]

リリーとシュカの出会いの話。リリーのストーリーパートナーとして、後にチェリーと命名される幻覚(新良エツ子さん)が現れる。夢を見るリリー。夢から醒めさせたのはシュカと名乗る、リリーを「見ている」だけだという男。

 

夢の中では、リリーはクランから卒業していて、父と母が出てくるのがもうしんどい。そしてリリー目線での、クランの仲間たちのことが語られて泣きそうになる。シルベチカもちゃんといる。

LILIUMのラストシーンは何度見てもダメだ。この絶望が好きだ。

リリーはどうやら、不老不死の謎解明のファクターとしてヴラド機関から狙われているらしい。ヴラド機関の規模が分からないが、これだけTRUMP情報持ってて不死者野放しにしてても、世間一般ではいまだTRUMPが御伽噺だと思われてるのが不思議ではある。

シュカこと松岡さんの歌が、発声から違う。ミュージカル俳優と歌手のハイブリッドって感じがする。

 

2. ついでいくもの、こえていくこと[作・宮沢龍生]

橋職人ホオズキ親方とその一番弟子シーメンの話。北へ向かいたいが橋が崩れて渡れないということで、親方たちの橋作りに付き合うリリー。ヴァンプに家族を殺されたホオズキ親方は昔ヴァンパイアハンターだったが、ヴァンプを殺し続けることに疲れ、石職人であった育ての親の意志を継いで橋職人になった。北への橋がもうすぐ完成だというところで、大雨による土砂崩れで橋が崩壊。その時シーメンを助け、代わりに濁流に飲まれた親方は後に息を引き取る。ホオズキ親方が遺した技術書と手紙で、橋作りの意志を継いだ「一番弟子」シーメンは5年後橋を完成させる。

 

端的に、良い話だった。大久保さんのシーメンが手紙を読むところは泣ける。永遠とは誰かに自らを継いでいくこと。継いで超えることが、有限の生命に出来ること。

じゃあリリーはなんだろうね、と思った。一人で継いでいけるけど、誰も超えられないような気がする。停滞した存在。

 

3. 求めろ捧げろ待っていろ[作・中屋敷法仁]

ライザンというイケメンヴァンパイアハンターが、ハンター辞めたいが助けを求めている人がいるからと剣を捨てられない話。その裏、ライザンに会いたいから、自らの血でヴァンプを誘き寄せる過激派ライザファン、老女マルグリットの話。ライザンに会い助けてもらう最中、マルグリットはヴァンプに殺されるが、それでもその死に際は恍惚の中にあった。これで助けを求める人はいなくなり、ヴァンパイアハンターを辞めることができるかと思いきや、ライザンにはなおマルグリットのような女性ファンが大勢いた。

 

問題作!!!!!

ここのリリー含めた全員、始終テンションが飛んでるのでいっそ付いてけない人もいるのではないかと思う。私は楽しかったな……というのが一番の感想だけど、エグイな……と一番思ったのもこれ。血肉(身銭)を削って推しに会いに行くオタクたち……。やめろ。

ライザンもライザンで完全にやぶさかでない感じなのも狂気だった。血で血を洗うというか。

曲で手拍子すると思わなかった。これは現場行って良かったなと。しかし本当に、本日のMVPばりにいけぴが最高だった。終演直後、一番記憶に残ってた感想が「いけぴが良かった」だった。

ところでライザンって「雷山」かな。*1

 

4. 少女を映す鏡[作・末満健一]

恋に憧れる、老女の見た目をした少女の話。ある屋敷に泊まったリリーはその主である老女アイダに鏡の中に閉じ込められる。アイダは歳をとる速度が人の5倍であり、見た目は老女だが本当は15歳の繭期のヴァンプだった。自分の本当の姿がリリーだと思い込み、いつか恋をしてみたいというアイダ。ある日クランを抜け出してきた繭期の少年が屋敷を訪れる。人の心の形が見える繭期症状を持つ少年は、街で見かけたアイダの心の形に恋をしていた。アイダは少年が老女である本当の姿を見ていないことに恐怖し、少年を拒絶する。月日が経ち、アイダの身体年齢が90歳になった頃、アイダはリリーを解放し、息を引き取る。心が無くなった老女のアイダの姿を見てなお、少年は「綺麗な人」だと言う。

 

鏡の中に閉じ込められるって、まあお耽美なシチュエーション。

基本リリーが鏡のアーチの中にいるまま話が進むので、ループものの感覚だった。

途中からリリーが積極的にアイダの繭期に付き合うことにしたのは、同情だけなのだろうか。「恋をしたことがあるかは忘れてしまったけど、痛みを伴わない恋はないと思うわ」みたいなリリーのセリフがなんだか好き。

最初淀んでるんだけど、終盤のアイダの繭期が終わる頃から空気がどんどん澄んでく感覚がした。

 

5. 馬車の日[作・降田天]

息子をクランに送り続ける女性と従者の話。ある雨の日、リリーは息子をクランに送る途中だという、通りすがりの馬車で街まで送り届けてもらう。彼らに別れを告げた数年後、同じ土地でリリーは再度馬車に拾ってもらったがそれは前回と同じ、年老いた女性メイプルとその息子ヘイゼル、従者シダーの馬車だった。しかし「初対面」だと言われるリリー。疑問を持ちながらの道中、ヘイゼルが馬車から逃げ出そうとする。その時ヘイゼルが「タイを綺麗に結べている」ことに気づいたメイプルは「お前はヘイゼルじゃない」と錯乱。ヘイゼルをシダーが撃ち殺す。同じく撃ち殺されるも、不死であるリリーが今度はヘイゼル役として連れていかれ、毎年馬車の日ごとにクランに送られては「ヘイゼルじゃない」と気づかれ、撃ち殺されることとなる。本当はシダーが本当の息子ヘイゼルであった。ヘイゼルはかつて厳しい母に嫌気がさし、母のイニシアチブをとりヘイゼルをこの世から消す。ヘイゼルを探し続ける狂ってしまった母への罪滅ぼしのため、シダーとして毎年繭期の少年たちを捕えヘイゼル役に仕立て上げ暮らしていた。ある年、例年より早くメイプルはリリーがヘイゼルじゃないと気付く。シダーが発砲に躊躇った瞬間、リリーを守るように躍り出たメイプルはシダーに撃たれ絶命する。

 

これは完全にループもの。こっちはリリーの意思ではないとはいえ、寿命まで付き合わなかったパターン。

この辺りから若干お尻痛いなと思い始める。ちょっとゆっくりな曲多めだと、というか、2,3話目がアップテンポだったからね。

「雨が降る前、〇〇鳥(失念)が鳴くのを聞いた?」の辺りのメイプルこと樹里さんがめちゃくちゃ怖いの。ホラー。最初メイプルはまともそうなのに、ここで一気に「あ、こいつはヤバいやつだ」という印象を植え付けてくる。

最後、シダーもといヘイゼルが「母を一人にしてはいけない」と言った後は、回想?ちょっとここよく分からず。

 


6. 枯れゆくウル[作・末満健一]

リリーとシュカの終わりの話。かつてヴラド機関時代のシュカは、リリーに対し実験台として非道な行為を続けていたが、ある日スノーフレークの花をリリーに見せる。花を見て泣くリリーを見たシュカは、リリーに心が残っていたことを知る。残酷な行いに耐えられなくなったシュカは、ヴラド機関からリリーを解放した。その後、ヴラド機関から盗み出した薬ウルを使い不老の身体でリリーの行く末を見守ってきた。しかし100年間でウルは底を尽き、シュカはリリーの目の前で力尽きる。

 

正気を失わず心を失わず、「悲しみ」の感情を抱えたまま永遠を生きる理由に、「ソフィー・アンダーソンにはなりたくない」というリリーが強くて美しくて、好き……ってなった。しかし再会して目の前でそんなこと言われたらと思うと、ソフィーの狂気加速するフラグ。

今回の我守護枠はシュカだったけど、確かに見守ってくれていた(しかも割と助けてくれる) 。シュカが目の前で逝った時、リリーはまた「悲しみ」を抱えたのかな…。

最後に歌った曲だったか忘れたが、サビが『永遠の繭期の終わり』のアレンジに聞こえた曲があったような気がした。違うかもしれない。曖昧。

 

 

 

 

 

 

~日和の章~

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初日は晴れました。

上原さんの歌唱力と歌詞の聞き取りやすさがぶっちぎってた。朴さんの振り幅が凄すぎる。

YAEさんとMIOさんが本気でどっちか分からなくて、3話と5話がどっちがどっちやってたのか分からなくて申し訳ない。紫蘭と竜胆も途中で入れ替わってたらどうしよう。

OPとEDのスモークは雨下だけなのかしら。*2

日和は末満さん脚本以外、リリーが聞き手な印象。

 

 

1. 家族ごっこ[作・末満健一]

家族だという3人との出会いの話。行き倒れたリリーは5歳のラッカ、7歳のノク、ラッカの父エルマー、3人の吸血種の家族に拾われる。ラッカとノクはリリーに懐き、家族同然の日々を過ごすこととなる。特にラッカはリリーを「ママ」と呼び、ずっと離れないことを約束させるほどリリーが大好きだった。5年後のある日、かつて血盟議会の優秀な議員だったエルマーの復職の可能性を断つため、反対勢力がエルマーらを襲う。3人の家族を守るため、リリーは敵を皆殺しにする。不死の力を見られたリリーは家族の元から去る。

 

初っ端、紫蘭と竜胆役を中山さんと三好さんがやろうとしたところ、SPECTER初演のオタクは悶えた。あれ最初から台本にあったのかな…いきなりギャグを入れてくる意味が分からんのだが……SPECTERのすぺくたーへのサービスだったんじゃないかと勝手に思っている。

5歳の朴さんと7歳の上原さんが観られる貴重な体験。

せいぜい15前後の女の子に対して「ママ」呼びにかなり違和感あったんだけど、ラッカは母親への憧れはもちろん、リリーが積み重ねてきた(果てしない)年月を、見た目という先入観無しに無意識に感じとったのかな…と思った。

リリーの無双シーンではトルソーが敵として使われてるんだけど、これを動かしてる人(三好さんかな)の動きがえらく俊敏でカッコよかったっていう最前列感想。もはやスライディングしてた。

 

2. 青い薔薇の教会[作・葛木英]

許したい人と許されたい人の話。ある人間種の村の神父ブルボンは、かつて繭期だった吸血鬼の青年モスカータに妹を殺された。繭期の衝動と分かりつつも罪悪感で自分が許せなかったモスカータはブルボンに罪を告白しどんな罰も受けると言う。それでもブルボンはモスカータを許すと、モスカータに妹が世話していた「不可能」という花言葉を持つ青い薔薇の世話をさせることになる。数年後薔薇は咲き、2人は良き友となったように見えた。しかしモスカータはどうしても自分が許せず罰を欲し、遂に村の人間たちに全てを白状する。モスカータを殺せと迫る村の人間たちだが、裁けるのはブルボンだけであった。ブルボンは本当はまだモスカータを許せずにいたが、「不可能」の花が咲いたように、許すことを諦めたくないと、モスカータに「生きてください」と言う。

 

脚本、すごいもん考えるわ。そうだね、繭期の自分の行為が許せない吸血種と、その行いを許したい人間もいるかもしれないよね。ブルボンとモスカータは本当にお互い、良い人なんだろうなと思う。

石舟さんの時から好きだったけど、相変わらず三好さんの演技が素晴らしい。目から血が流れていそうだった。開演まで10日切ってからのキャス変の演技とは思えん。

リリーは割と聞き手というか、深く関わらなかったかな。不死のことバレてないしね。しかしこの出来事はリリーにどんな影響を与えたのだろう。少しは自分を許せる方に傾いたのか、それとも。

「不可能」という花言葉の花がTRUMP界にも存在するのは、凄まじい「希望」をぶち込まれた気分になった。末満さんだったらこれを書いただろうかという一抹の違和感はある。

 


3. 静かな村の賑やかなふたり[作・岩井勇気

孤立した人間種の村の言い伝えの話。恋人のベルナールに会うため道を急いだアドレーヌはリリーと衝突する。手を怪我したリリーの傷の再生を見たアドレーヌはリリーが吸血種だと気付く。アドレーヌはやってきたベルナールと共に吸血種にまつわる村の言い伝えを次々思い出すが、それは全て的外れなのであった。

 

漫才である。雨下と同じく3話目がギャグ。

まず先にベルナールが出てくるけど癖強すぎて出オチだった。上原さんも大概振り幅デカい。ソーシャルディスタンスキッスは笑った。コウモリ飛んでっちゃうのも笑った。

吸血種こわいのうたは、またケリトン出版社みたいに図らずも1位になってしまいそう曲である。

 

4. 血と記憶[作・末満健一]

ラッカとノクとの再会の話。リリーとの別れから20年後、血盟議会に入ったラッカとノクは不死者リリーの捕獲部隊としてリリーを追っていた。坑道を逃げ回るリリーは出口でラッカ、ノクと再会する。ラッカはリリーに辿り着くために血盟議会そしてヴラド機関に入ったのだった。「一緒に逃げて、また家族になろう」と言うラッカだが、リリーはラッカを噛み、ラッカの中からリリーの記憶を全て消した。その最中部隊の一人であるヴァンパイアハンター ガビーが仕掛けた爆薬により坑道が崩壊。ラッカはリリーが突き飛ばしたおかげで助かったが、ノクはリリーが覆いかぶさってもなお岩の下敷きになり即死する。それでも生きていたリリーの血は再生を試みつつ地下水脈を通り、川を通ってゆく。その最中、再生中、ノクの血が混ざっていたせいかノクの意識がリリーの中に残っており、ノクはリリーにラッカを救った礼を述べた後、「ラッカに記憶を戻してやってくれ」と告げる。リリーは夕焼けの海で完全に再生する。

 

突然のラップ。ガビーは三好さんなんだけど、キャス変したと思えないくらい妙にマッチしてた。いやでもこのラップのアイクさんも見たかったな。しかし黑世界のヴァンパイアハンターろくな奴いないな。

ここの上原さんはよく見る感じのカッコいい上原さん。ノクは元より血盟議会志望だったけど、ラッカのことが好きなのは1話で語られてて、ラッカを守るためにラッカと同じ部隊に入ったのかな。何だか「ラッカのことは好きだ。リリーのことも好きだ」的な最後の言葉が、ラッカも"家族としての好き"のように聞こえたけど、結局どうだったんだろう。

朴さんと上原さんが歌った時レミゼ…となった。ラッカとノクの曲の時の照明が印象的で、私が見た位置からだとお互いが格子の中にいるようなライトだった。

リリーの再生モーションがぐにゃぐにゃで。ぐにゃぐにゃのぐちゃぐちゃ。原型を留めないほどの肉片…はSPECTERの萬里くんの最期を思い出すな。あのグロテスクな状態がこの美しい少女に何度もあったと思うと、あまりのギャップに寒気がする。それでもリリーという花は綺麗なまま。

 

5. 二本の鎖[作・来楽零

恋人同士である上流階級の娘と使用人の息子の話。18歳になる繭期の少年アントニーと繭期の少女フィロは二人だけで森の奥で暮らしていた。アントニーの繭期の症状は重く、自傷を伴う自己嫌悪だったが、フィロの症状は比較的軽かった。かつてフィロを愛してしまったアントニーは、フィロのイニシアチブをとり「僕を愛してくれ」と命じたことをリリーに吐露する。しかし実際にはイニシアチブがなくともフィロはアントニーを愛しており、フィロもまたアントニーのイニシアチブをとり「私から離れないで」と命じていたのだった。

 

脚本、すごいもん考えるわ2。青い薔薇の教会といい、メンタルの輪廻構造には感服しがち。

これもリリーは聞き手。アントニーに対する「人の心を操って思い通りにする…最低ね」という言葉は自分も対象だよね。どうして自分で自分を傷つけるようなこと言ってしまうのか。誰も許してくれないし自分も許せないから、自分で自分を罰しているのだろうか。

繭期を終える年頃の吸血種は何だか新鮮だった。今まで「いい歳して繭期」含めて吸血種、繭期だらけだったから。ほとんど繭期のまま死んじゃったから。本当はちゃんと終われるものなんだよね。

 


6. 百年の孤独[作・末満健一]

リリーとラッカの終わりの話。ノクが死んでからラッカは100年生きた。幸せな人生だったが、ぽっかりと抜け落ちた記憶がある。それだけが心残りであるラッカの元に訪れたリリーは、ラッカに自身の記憶を戻す。「あなたは一人じゃない」と言い残し、ラッカはこの世を去った。リリーの意識下にいたノクもまたそれを見届け、完全に消失した。

 

ラッカが一途すぎる。一緒に暮らした5年間でどうしてそこまでリリーを愛せたのか。そして4話でもうリリーとラッカは二度と会わないと思ってたから最後の最期にちゃんと記憶を戻したリリー、なんて良い人なのかと思った。ラッカが自分の存在をこれ以上追って苦しまないような、ノクとの約束も守れるような選択をしたんだね。

ラッカもノクのことが恋愛対象として好きだったの切なすぎる。両片思い。幼い恋心的には一緒に暮らせていれば良かったんだろうけど、それが大人になっても変わらずそうであることは、あまりにも尊くないか。

『少女純潔』聴けると思わなかったな……………。かつて同じ劇場で同じ曲を鞘師さんは聞いていたんだなと思うと、サビでちょっと泣きそうになった。少女純潔の時の照明が神がかってて、客席天井が星空になっていて、それはそれは美しかった。思わず舞台から目を逸らして見上げてしまったほどに。現地に行って良かったと本気で思った。歌詞も少し違っていたね。

リリーはソフィにはなりたくないけど、ソフィと同じように星に手を伸ばす。

 

 

 

 

リリーの性質を生かしている話が多いという理由で、雨下のが好みかな。多分日和のが泣けるんだろうけど、今回涙を流すには至っていないのでどちらとも言えず。

チェリーはリリーの幻覚なわけだけど、思考回路が剥離してるような思想の違いはやはり繭期のせいなのかしら。

ヴラド機関、不死者について割と何人もいるような物言いだったけどクラウス、ソフィー、リリー以外にもいるのかしら。深読みかもしれんが謎深まる。

 

何となく、末満さん以外の脚本は"純粋な希望"の話が多かった気がする。救いがあるというか。

末満さん脚本は…どうだろう。雨下日和それぞれの100年間を描いた一本の話になっていて、どちらもリリーが有限の命の吸血種と深く関わる。シュカもラッカも死に際に救いがあって、一見希望の話に見える。でもリリーにとってはどうかと考えると、彼らの死によって、悲しみを抱えたまま生きるリリーの世界はより黑く染まったのではないかと思うのは私がひねくれてるのか?

ただ、星=死の比喩であると考えると、見送る星が増えるほど夜空は美しくなり、黑い世界が深まるほどまた夜空の星は美しく輝く。

 

満天の星空は、リリーの心を癒してくれるのだろうか。

美しく咲く花はいつか星になれるのだろうか。

 

 

 

 

 

★★★

*1:雷山でした。

*2:どうやら初日だけ日和のスモーク無かったようです

GRIMM

 

『GRIMM』

2020.8-13-16 六行会ホール

兄・ヤーコプ・グリム(演:高崎翔太)と弟・ヴィルヘルム・グリム(演:橋本祥平)はドイツ各地を巡って、古くから伝承してきたメルヒェン(昔話)を収集し、残酷な部分を切り落として『グリム童話集』を完成させた。

やがて『グリム童話集』は優しい世界観と奇妙な展開で多くの読者を魅了し、世界中で愛される物語となった。

しかし平穏な生活を送っていたグリム兄弟の夢枕に、正体不明の悪魔が現れる。悪魔の目的は、優しく編纂された物語を残酷な話に戻すこと。そんな悪魔の計画を阻止すべく、グリム兄弟は改ざんされた童話の世界に潜り込む。そこには彼らの想像を絶する「残酷な世界」が待ち構えていたーー。

http://kikakutane-stage.com

 

 

8.13 昼  B列下手 にて

 

 

 

2列目かと思ったら。最前列潰されてたので最前だった。初日最前初めてかもしれん。

六行会ホール改装後のこけら落とし公演らしい。改装してたの知らんかった。てことはあのお手洗いのデザインの敗北蛇口もなくなってしまったのかしらと思ったら、お手洗いはそのままだった。椅子が綺麗になってた。つまりこの椅子に初めて座ったのは私。

 

YouTubeで企画会議を生配信して、ファンのコメントやTwitterツイートから物語やキャラクター設定が出来上がるという、視聴者参加型オンライン企画会議"キカクのタネ"、面白い試みだった。何回か見てたけど本当に"無"からのスタートだし、企画ってこういう風に出来上がるのかーこの時期にパンフ編集&発注でも間に合うのかーなど、色々勉強になった。大して参加はしていないけど、進捗を見守り、視聴者のアイディアをもりもり盛り込んで出来上がった作品だと思うと感慨深いものがある。

しかしグッズまでアイディア募集するとは思わなかったし、パンフに載せる二次創作(いや視聴者も制作の一員だから一次創作なのか?)を公式が募集するとはもっと思わなかった。そして開演一週間前に最速先行のチケット発券開始というなかなかのギリギリスケジュール。中の人も割と追い詰められてたんじゃなかろうか。「これはキカクのタネじゃなくて、ナヤミのタネ」(by橋本さん)

 

ギリギリと言いつつ、開けてびっくり、この短期間でここまでやれるのかという完成度の高さ。

まず会場入った瞬間、舞台セットの綺麗さに驚いた。思ってた10倍、豪華で素敵だった。

そしてキャスト2人のビジュアルがあまりにも最高だった。とても似合ってて、開演して明かりがついた瞬間「綺麗」という感情しか湧かなかった。衣装も最高。最初のポーズって銅像か絵画と同じポーズなのかなぁ、要確認。

 

ストーリー、前半はかなりコメディに振ってて後半は一気にシリアスになる。でも決して重いわけじゃなくて、上演時間90分と短めで、すっきりわくわく観られた。

二人芝居なので一人何役もやるんだけど、これがまた振り幅すごくて面白い。橋本さんの悪魔とか本気で別人かと思った。基本ヴィルヘルムの悪夢中心に進むから、高崎さんのが兼役多かったかな?突然のカエルの被り物なんだったの笑

 

今回出てきた童話

・いばら姫

・怖がることを覚えるために旅に出かけた男

・鉄のストーブ

・歌う骨

・リュックサックと帽子と角笛

 

前半の振り切り方は最高に振り切っててかなり笑わせてもらった。「濃厚接触」「GO TO」とかの時事ネタ、「緑効青汁*1」「撃弾ハンサム*2」「zozozo town*3」とかのキャストネタ、ポーズ付きの「うるせえ!!行こう!!*4」とかの漫画ネタ、吉谷さん相当楽しんで遊んでるなと。

いばら姫とババアのシーン、配信の公開読み合わせで何回か見てるのにそれでも笑っちゃう。

鉄のストーブの前半までかなりギャグに振ってるのに、後半からちょっと真面目になっていく。鉄郎*5と姫にちょっとときめいてしまった。

そこからの歌う骨で一気に不穏な空気に。前半3つはラブロマンスなのに、後半2つはあまり関係の良くない兄弟の話なんだよね。リュックサックと帽子と角笛は、あらすじ読んだ段階で何だこの胸くそストーリーと思ってたけど実際演られると、恐怖だった。ここの橋本さんめっちゃ怖い。

 

ただ、物語後半から、私の理解力が追いつかなかった。初日の朝、ストーリーに出てくるグリム童話が公開されて、若干ネタバレ食らった気になったけど、全然知らない童話ばかりだったのであらすじを先に読めたのは幸い。これ知らなかったら情報過多で余計に混乱してたと思う。一瞬でも気を抜くとすぐ置いてかれるスピード感は良いのだけど。特に、現実と夢の世界の境目が分からなくて、「今キミはヤーコプなのか悪魔なのかそれともヴィルヘルムの妄想のなにかなのか!?」と大混乱。だからオチがちょっと分かってない。複数回見れば分かるだろうか。

 

"本"の演出が素晴らしい。

稽古期間も少ない中、役者が台本を完全に覚えてなくても「読める」ような本の演出(朗読パートというらしい)は、この題材だからこそであり上手いなーと思った。またそのことを逆手にとって、(台)本が見えないことを笑いに変えてたのも良かった。中身も普通の台本みたく縦書きではなく、ちゃんと横書きになってたし。

リュックサックと〜だったかな?本を渡し奪い、交互に読み合っていくシーンはカッコよくて、でもゾワゾワした。

 

途中「種が芽を出し実をつける」(めちゃくちゃ曖昧)的な台詞があって、キカクのタネだからこそ敢えて入れた台詞なのかなと。

ヤーコプが指差す時に中指使ってるの、高崎さんの癖なのかな〜と思ってたんだけど、パンフ見たらそういう設定でわざとやってるらしくてちょっと感動。

 

 

本当に面白い企画だったので、是非キカクのタネ第2弾もやってほしい。

 

 

 

 

★★★

*1:高崎さん出演CM

*2:高崎さん所属のユニット

*3:橋本さん所属のキャストコーポレーションTwitter

*4:ワンピースのルフィの台詞

*5:鉄のストーブ野郎

舞台 KING OF DANCE

 

『KING OF DANCE』

2020.

7.16-19  大阪 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

7.23-8.2 東京 ヒューリックホール東京

8.8-9      愛知 名古屋市公会堂

 

時は大ダンス時代。誰もがダンスを嗜み、ダンスパフォーマンスにおける地位は最高潮を迎える。
そんな時代にあって実力のあるダンサーたちが目指す一つのタイトルがあった。
その名は「KING OF DANCE」(KOD)。5年の空白を経て開催されるその大会を目指し、
全国のダンスの実力者たちがしのぎを削っていた―。

D2(福澤侑)移籍という崖っぷちからの大逆転を見せたDrawing Back(ドロバ)の高山空(高野洸)たちは、
見事決勝トーナメントへと駒を進めた。
そのライバルチームとして、グループステージで熱い闘いを繰り広げたWORLD_Mの三浦海斗(和田雅成)たちも同じく決勝への切符を掴んだ!
決勝トーナメントでは 、KODの頂点を見据える両チームの前に新たな強敵たちが待ち受けていた。

WORLD_Mの前に新たなライバルとして現れる“JAIL”。
絶大な注目を集める実力派ダンスチームとして、WORLD_Mの前に立ちはだかる。
敏腕プロデューサー兼振付師でもあり、現役ダンサーのJ-I(ジェーアイ・楢木和也)。
そのJ-Iの弟子である、生意気な口調でお調子者なAL太(アルタ・辻諒)。

一方ドロバの前に時本修武(荒木宏文)の師匠であるNAOTO(SETO)が現れる。
自由自在な音の遊び、繰り広げられるステップは、誰も真似することが出来ないNAOTOオリジナル。
そんな憧れの存在から指導を受けることになったドロバメンバーは、準決勝の対戦相手を倒すべくパワーアップを図る。
それぞれ熱い想いを抱きながら、
多彩なダンサーたちが集まる決勝トーナメント!!
果たして、ダンサーNO.1の称号を手にするのはどのチームなのか?!

https://king-of-dance.com/stage/

 

 

8.2 昼  G列センター にて

 

 

 

G列は7列目だと思ってたら、実際4列目だったし2列目まで全席潰されてるわ自分の目の前が着席禁止席だわで、実質ドセン最前だった。しかしこんな最前あってたまるか。ロビーも静かで劇場もすごく静か。振り向いても空席が、寂しい。

ただ、心の底から「開演して良かった」としか言えない。ドラマの頃からめちゃくちゃ楽しみにしてたからね。

最初は2公演行けるはずだったんだけど、座席半分にするために再抽選になって、1公演になってしまった。それでも行けることが有難い。

やはり舞台は、「劇場で観るのが最高」だと強く思う。全身を包む空気、全身に響く音、全身から感じる熱量。それがないと、私はどうしてもその世界に「連れていかれない」。(特に私みたいな集中力がとにかく低い人間にとっては)

 

 

劇場前が撮影できなかったので。なんか文字が立体的だった気がするんだけど、ヒューリックホールさんこれ毎回公演に合わせて変えてるの?

https://twitter.com/kodproject/status/1286263812941783041?s=21

 

今回全員配布だったパンフ。配布されるの忘れてて小さい鞄で来ちゃったよね。

f:id:toMiharu:20200803071540j:image

パンフのスタッフ一覧見てて思ったんだけど、キンダンってすごく女性スタッフが多いなって印象。だから何ってわけでもないんだけど、機材系とか、普段もっと男性メインな気がしてたからちょっと感動というか。

あとパンフの直筆文字が、キャストの文字なんだけどそれぞれのキャラっぽくて良い。

 

前アナがちゃんと「本日はキングオブダンス決勝トーナメントにお越しくださり…」でとても良かった。前アナから世界観つくってくれるの大好き。後アナも同様で、KOD現実に存在してた。

舞台セットは大きな鉄骨の枠組みが上まで飛び出してて多数のライトが上下左右あらゆるところに設置されていた。何ともヒューリックホールに似つかわしくない、ダンスバトルの会場。ヒューリックホール、綺麗なんだよな。そういえば初めて行ったけど、音響も良かったと思う。音響が良い会場は大好き。

 

ドラマが先にあると、舞台でDRAWING BACKやWORLD_Mの面々が出てきた瞬間「テレビの人たちだ!」という、ミーハー的感覚に陥ったのが自分の中で新鮮だった。始まりに舞台上にいるのはアンサンブルの方々で、メインキャストは後から出てきたことで、この感覚が引き出されたんじゃないかと何となく思っている。"溜め"というか。

 

テンポ良くて、2時間があっという間だった。

舞台を観るのに目が足りない。席が近かったせいもあるが、本当に目が足りない。

ダンスバトルシーンでは毎度手拍子するんだけど、もう手拍子止まっちゃうよね。観ながらリズム合わせるの無理だよね。同時に二つのことができなくて、視覚と聴覚って密接なのかなあと思ったりする。そして大阪公演で手拍子を最初に始めた人すごいね。手拍子煽られるとこはあるけど、3曲目のドロバくらいからだった気がする。

ダンスのことはど素人だから、何となく翔くん(丞威さん)とか「この人はすごく上手いな」程度で、誰が特別上手くて誰が下手とかは分からん。「この舞台の人たちはみんな上手くて凄いな」という本当のど素人感想である。手拍子忘れてポカーンしちゃう。

本当ダンスシーンにどうこう言えないんだけど、あと100回見返したい。ドラマと違って全編ノーカットでお送りします!ってのが良い。やっぱダンスをテーマにしているというからには、そこが一番見たかった!って感じ。多方向にカメラが設置されてたり(完全に客席向き、つまりセンター背後カメラもある)、アンサンブルさんの手持ちカメラもあったりして、背景にそれらのカメラからの別アングル映像がモニターされてるのも面白かった。まあ実際、生観劇すると生の方ばかり見てしまうんだけど…。

ドロバが全員いつも楽しそうにしてるのがすごく好き。ドラマの時も思ってたけど、踊ってる時の高山空好きなんだよなー。ニコニコしてて可愛いー。JAILも斬新かつお洒落で良かったな。

とりあえず、「ダンスすげー(視覚)」と「台詞なんて言ってる!?(聴覚)」と「あの人今何してる!?(視覚)」と「手拍子(聴覚触覚)」の両立は無理。パンクした。

 

ストーリー展開は、もう王道ド直球!って感じ。ただでさえ上記の通りパンクしてるのに、この話のストレートさじゃなかったら物語楽しめてなかったと思う。ただ脳みそ空にできるかと言われるとそうでもなくて、考えさせられるところは考えさせられるので、楽しいと難しいの絶妙なバランスだった。

今回の宿敵(?)JAIL、清々しいほどの嫌味言うわ、怪我させるわ、裏からおとしめるような展開は胸糞になれど、まあそこはドラマのRED=RUMでも経験済みだし(?)。大体空くん筆頭のドロバの光属性に救われたな。「絶対勝とう」というこの熱さ、元気出る。

空くん、昨今見かけない少年漫画の主人公みたいで見てると何だか懐かしい気分になる。翔とHIDEくんは昨今も見かける少年漫画の仲間かな。

王道主人公空くんと王道ライバル海斗くんの"共闘"は全人類が大好きなやつです。WORLD_Mの真城さんが「海と空コンビだな」(曖昧)と先に海斗を言ったのに対して、ドロバのトッキーが「空海コンビか」(曖昧)と空を先に言ったのが地味にニヤけた。ここちょっと曖昧だけど、確かそう。間違ってたら消す。

師匠NAOTOがラスボスでないにしろ(一度負けたら終わりだからほぼラスボスだけど)、隠しボスキャラで出てくるのも王道ゲームっぽい。オタク、好きです。

最後にテーマソング流れるのもオタク筆頭に全人類が好きなやつです。

エンディングだったか、空くんが、お世話になった人たちを順繰りに挙げていってその人にピンスポが当たってく演出の時、「今まで見守ってくれた人たち」と言ったら客席ライトが点くのもずるいです。

ピンスポ当たってドゥンのSEは、おっ!いつもの吉谷さんだ!って感じです。空海センターズとかの対比構造も、いつものだ!って感じです。

 

しかし途中でメンバーが増えたり減ったりバトル編成変わったりしても、ダンス即対応できるもんなんだなぁ、ダンサーさんって凄いな。多少創作補正あるのかなと思いつつ、ちゃんとダンサーさんへのリサーチ、監修が入ってる辺り、ここは本当なんだろうな。

創作補正と言えば、キンダンは海斗の「二次元キャラみたいなやつだな」(曖昧)とか、創作されたキャラクターによるメタ発言的なところがあるからギョッとする。さらに逆にこの発言で、現実世界の人間としての存在感を主張しているようでゾクゾクもする。

 

裏テーマは「心のディスタンス」だそうで。*1

この辺りの話は群像劇だからか、一回見た限りでは情報量が多くて考察できない。色んな人の心のディスタンスがあって、でも最後はハッピーエンド。雑で申し訳ない。詳しくは見てくれ。

とりあえずHIDEくんとD2くんのディスタンスについて、ドラマでは分からなかった、踏切での台詞も舞台で答え合わせがされたのが良かった。

真城さんの、"世界の三浦"に対する執念的なものはなんだったのかいまいち分からなかったな。執念で言えばJ-Iさんのクソデカ感情は分かりやすかったし、ただただ色んな策略、賢いなーと思ってしまった笑。あれ最終的にAL太くんとどうなったのかしら。2人で上手に捌けて以降、カテコの様子とか見れてない。

 

ドラマの時からD2こと津田くんのこと割と好きだったんだけど、舞台でもっと好きになっちゃったじゃん…。津田くんのダンスすごい好き。なんだかよく分からんがすごいシャープですごい(語彙力)。そしてD2覚醒ダンスの、素人目でも分かる差分!!確かにめっちゃ"うるさい"(笑)んだけど、「脇を固める兵隊として…」とか自分で言ってたことを考えると、まさに海斗と同じく「感動した」。時々髪を耳かけしてるのにグッとくる。覚醒時に笑う瞬間や、カテコの舌ベーも心撃ち抜かれた。舞台で絶対津田くん推しになった人多いと思う。いつも右のこめかみの横に津田くんの鎖骨があったHIDEくんが羨ましい。

ちなみにHIDEくん*2も好きなんだけど、舞台でもやっぱり最高に可愛くて良かった。もう笑顔と筋肉ね。筋肉。うん、筋肉が、すごい。テニミュ時代からすごいアクロバットしてたけど、今回それが全開で本当にご馳走様でした。

そういえば、腹チラして嬉しいのは津田くんで、腹全開が嬉しいのはHIDEくん。猫と犬みたいだよねこの2人。

高台の柵を乗り越えようとするHIDEくんの下に、文句言いながらマット持ってきてあげるトッキーが「実は良い人」の頂点すぎてものすごく滾った。めっちゃ文句言いながらドロバを最後まで面倒見て今後も面倒見てくれるトッキー。ラストの展開は私まで「トッキーーーーー!!!!」と叫びたくなる。この舞台、「最高オブ最高」「おけまる」「分かりみ」とか、結構現代ネットスラング出てくるからあえて言わせてもらうけど、トッキー天使か?

AL太くん、煽り力の高さと語彙の多さが玄人のそれ。プロの煽り師。でも「若ぇの連れてんな」って言われてるの見て、外見的にもコンマ秒で「若ぇ」の納得してたんだけど、あとから中の人の辻諒さんが推定年齢わりと上らしいと聞いて度肝抜かれた。なんなら未成年かと思ってた。J-Iさんに切られた後のAL太くんなんてもう赤ちゃんみたいな顔してたのに。

海斗くんはだいぶデレましたな。D2への素直な感想、空と共闘後のハイタッチ(しないかと思った)、空の炎上真っ最中の「何かあったら俺に言え。三浦の息子が動いた方が〜」という優しすぎる声掛け。それでも雰囲気が柔らかくなるということはなく、始終ストイックさを纏っていたのはカッコよかった。

アンサンブルの方々も良かった!今回ドラマを見てるせいかメインキャストで成り立ってしまうような気もしていたから、どう動くんだろうと思ってたけど、やっぱり各演出で素晴らしいアクセントになっていた。みんな上手いんだよなあ本当に。衣装も可愛かった(特に白シャツの上だけ留めてる衣装)し、推しブルズの仲田さんもカッコよかったし。

 

今更だけど舞台キンダンは、決勝の結果が公演によって変わるっていうガチマルチエンド方式です。

https://twitter.com/koutaroyositani/status/1284103775125295105?s=21

ドロバの「崖っぷち」台詞的に、決勝戦ショーケースまでは筋書き通りなのかな?ダンスバトルだけがリアルジャッジ?

その瞬間まで勝敗が分からない、まさに平行世界が存在する舞台なんて、熱いとしか言えない。私は私が観た、ただ一つの結果を大事にしたい気持ちもありつつ、やっぱりもう一つの世界線も見たいという神様目線もある。

私の回はWORLD_M優勝エンドだったけど、どう考えてもドロバ優勝エンドも観たすぎた。優勝直後のシーン変わるんでしょ?ドロバが勝ったらトッキーは海外でもどこにでも行けって話してたのちょっと謎だったんだけど、そこんとこの話、観たすぎ。(組織委員会そんな簡単に抜けられるんか)(まあ真城さんと交代するだけでOKな委員会だからいいのかもしれない)

両方見て初めて知れる情報もあるんだろうなぁと思うと、勝敗分かってる配信を買うしかないんだろうな。時間あるかな。観て初めて理解できた吉谷さんのキンダン裏話ツイートもあるし、配信見られたら追記したい。

 

 

しかしこの情勢で座席数半分でなければ、手拍子も拍手も笑い声も、もっと劇場に響いていたのかなと思うと少し悔しい。

笑いどころではリアクションある方がキャストにとっても良いことだと思うから、絶対友達と来てたりちゃんと隣に人がいたら、もっと笑い声を舞台側に届けられてたのにな、という。私の時は東京前楽だったのもあるけど、笑い声がはっきり聞こえたのって真城さんの世界の三浦モノマネ(???)の時くらいだった。

難しいかもしれないけど再演してほしいな。やっぱ生の舞台って最高オブ最高だよ。

 

 

 

 

 

★★★

むこうのくに

 

『むこうのくに』

2020.7.23-26 Web生配信

 

世界はひとつになった——はずだった。

 

現実世界のつながりを絶たれた時代が終わろうとしていた。

多くの人は喜んで太陽の下へと駆け出したが、 "むこうのくに"に残ることを選んだ人もいた。

そこは、画面を一枚隔てれば、 生まれた場所や話す言葉、ヒトかどうかさえも関係ない、 現実のしがらみが無効化された世界。その夏、ぼくは相変わらず画面の前に居て、 "むこうのくに"へアクセスしようとしていた。

行方をくらませた、"ともだち"を探すために——

http://no.meets.ltd/mukounokuni/

 

 

7.23 昼 配信 にて

 

 

 

"全員、誰も、一度も会わずに上演。"

配信で生演劇をするという面白い試み。普段円盤など、映像での観劇は【映像】とタイトルに付けてるんだけど、これは映像が本番でありそのままの形だからあえて付けなかった。

 

どんなもんだと思っていたけど、感想としては思ってた100倍凄かった。し、面白かった。

まず入り口からUIが凄い。(スクショはOKだったから自分で撮ったスクショ載せてます)

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開演直前は、生観劇と同じようなワクワク感があった。開演はなんかちょっと鳥肌立った。

視聴画面も凄い。右はリアルタイムでコメントができる。あと時々、エモーションバー(エモーショナルバーだったかも)という、ニコ生の最後の投票画面みたいなものが出てきてリアクションできる。笑顔と怒り顔と泣き顔と絶望顔が選べる。とにかくUI/UXが凝っている。

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「むこうのくに」とは作中では「ヘルベチカ」という仮想空間のことで、まあサマーウォーズのOZみたいな感じ。そのヘルベチカの世界に自分もログインする設定。キャストは全員、Zoomみたいな*1フィルターかけられる配信ツールで撮影してる。ヘルベチカ内での通話は素顔でやるもフィルターをかけるも自由だが「素顔を無理に詮索するのはマナー違反」という設定で、フィルター機能も完全に演出の一つ。いやリアルタイム合成技術すごいな。

キャストは各々個室で撮影してるんだけど、背景と顔フィルター技術でこんなに表現の幅が広がるのかと驚いた。あとカメラも多少動くし(カメラアーム設置してんのかな)、1カメ2カメがある人もいる。

これは上演中のコメントで知った知見なんだけど、ヘルベチカって、フォントの名前なのね。Helvetica閉鎖後に普及したFuturaという仮想空間もフォント名というフォントシリーズ。作中で使われてるフォントもそれなんだろうな。

 

 

ストーリーは未来の自分の記録のためにざっっっくり書く。ネタバレしてる。端折りまくるし正確でもない。

 

過去、主人公マナブはコンピュータ技術には長けるが友人がおらず、ともだちとなるようなAI"レイン"を作った。レインはマナブの「レインの他にもともだちができたらもっと幸せ」という言葉を聞いた直後、マナブのローカルコンピュータから姿を消す。

5年後、急速に普及した仮想空間ヘルベチカでレインを探すマナブの元に、スズという女の子が現れる。マナブはスズを通してフランカーズ(フィルターをかけずに素顔で対話しようという思想集団)に友人ができる。一方、ヘルベチカの創始者とされ実質のトップであるリィン・カーネーションのAI疑惑を追っていた警察に、マナブはリィンの作成者容疑をかけられる。

警察は操作のうち、現実世界派の綾小路議員がヘルベチカのパペットアカウント(使わず放置されたものを第三者が不正利用しているアカウント)を用いて現実世界での投票数を稼ごうとしていた事実に辿り着く。パペットアカウントはウイルスでリィンを攻撃し、ヘルベチカは多くの機能を停止していた。同時にスズがいなくなる。スズはAIであり、リィンのバックアップだった。

リィン=レインであると確信したマナブはレインと対話すべく、ヘルベチカのファイアウォールを突破する。レインがヘルベチカを作ったのはマナブの幸せを願ってのことだった。ヘルベチカの危険性を危惧した政府から共に逃げようと言うマナブに、レインはマナブが罪を被るわけにはいかないとヘルベチカに残ることを伝える。

ヘルベチカ閉鎖の数年後、世界には新たな仮想世界フーツラが普及していた。友人との約束があると言うマナブは外の世界へ出ていく。

 

みたいな。本当は警察コンビとか仮想世界派*2コンビとか、良いキャラたくさんいる。綾小路議員も完全悪じゃなくて、自分の正義のために過ちを犯す、みたいな人だった。過ちを認めた経緯がちょっと謎だったけど。

劇中で「仮想人格保護法」だったか、仮想世界でも人権を持たせようという法律を制定するか否かという話があった。ここでエモーションバーが使われてたんだけど、一回目の投票は賛否が綺麗に分かれてて面白かった(二回目は見逃した)。保護法もそうだけど、現実至上主義の人もいれば仮想世界の自分が本当の自分である人とか、色んな思想の人がいるよねっていう。

役者さんもみんな良かったね。DJめがねちゃんのテンションとか。議員の秘書(圧倒的現実派)の氷室のガチ泣き演技とか。

 

 

個人的に気付いたこととしては、「集中力を保つという行為は体力を使う」。

約2時間30分(5分休憩あり)の上演時間だったんだけど、同じ条件で劇場の椅子に座って固まっているよりも、疲れた。自由に飲み食いできるわ携帯弄れるわなにより好きな体勢で見られるわで、楽なはずなのにね。多分、自分の周辺環境や流れるコメント*3が観劇体勢に対する集中を乱しまくっていた。私は特別集中力の無さに定評があるので、普段どれだけ"劇場内"という超制限付きの空間に助けられていたかを実感した。その場所で出来ることが少ないほど、出来ることに集中できるのは本当。

 

そういえば主題歌が最近流行ってるらしいYOASOBIさん。既に流行についていけない私は初めて拝聴した。アーティストを他の作品に例えるのは失礼なんだけど、何だかボカロを思い出して、歴史は繰り返すんだなあとか思った。どうも、ボカロ全盛期世代です。

私は割と快適に見られたから入り込めた方だけど、結構環境によって映像が止まるとかあったみたいね。多分キャスト側の通信状況で一瞬音声途切れたりとかもあった。あと声のボリュームの差とかね。難しいね。

何にせよ、こういう演劇があるというのは多様性という意味でも非常に面白いなあと思う。

 

 

 

マナブ、スズ、フランカーズ(ソウスケ、マミ、タイチ)

f:id:toMiharu:20200723212704p:image

警察組(刑事((すみません、名前失念)、コトリ)、秘書(氷室)
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仮想派(ピコ、バトラー)、氷室
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カーテンコールのフランカーズポーズ
f:id:toMiharu:20200723212652p:image

 

 

 

★★★

*1:使ったことないから分からんけどいっそZoomか?

*2:リィンの司会とセキュリティ担当というか…なんと言うか……

*3:正直コメントは途中うっとおしくなって全画面に切り替えたりしてた。ただ、コメント付きの視聴画面の背景すら演出の一部になってたからそれが気になってまた戻す、とかいうことをしていたらまた集中が…

特別捜査密着24時 from 100シーンの恋+

 

スマホ連動型ヒロイン体験朗読劇  特別捜査密着24時 from 100シーンの恋+』

2020.7.3-6  R'sアートコート

 

あなたの職場は、西新井警察署の生活安全課。

一応、刑事。

連続殺人事件や国際爆弾テロ、凶悪犯を追うだけが刑事の仕事じゃない。

安全な街づくりだって、刑事の立派な仕事。町の人達の相談に乗って、町内の問題を一緒に解決する、この方が性に合っている。

――と、思っていた、のに・・・・、

https://products.voltage.co.jp/readinglive/

 

f:id:toMiharu:20200704205325j:image

 

7.4 昼 3列目下手

      夜 8列目センター

 

 

 

最初に言っておく。私史上、相性最悪の題材である。そもそも恋愛ものが苦手でヒロイン不在の乙女ゲ舞台も苦手で、朗読劇も苦手ときた。じゃあ行くなよって感じなんだけど、推しが出るなら仕方ない。この舞台は何も悪くない。本当にすまない。

 

というわけで、コロナコロナでようやく久しぶりの生観劇です。

やるんかいって感じだったし、まさかの全公演でアフトやんのかいって感じだったけど、アルコール消毒→検温→1席空けなど座席数減は徹底されていた。アフトでソーシャルディスタンスを越えた役者さんがステージディレクターの中村さんに怒られていた。

なんだかんだ、生芝居はやはり良いなと思った。

 

これは主役、桐沢役の役者ファン大勝利舞台。私の回は岸本勇太さんファン大勝利。

原作全く知らなかったんだけど、これはあれなのね、いわゆる桐沢ルートなのね。ぶっちぎりでセリフ量が多い。

他はthe脇役。出番すっくない。昼、柏木さん水石さんが突然ナースキャップ被りだしてどうしたと思ったけどこういうオモシロ別役は有難かった。

黒スーツは良いですね。やっぱスーツは良いんですよ。

ちなみに「スマホ連動型」というのは、スマホで選択肢選んだらその後の展開変わるとか言う訳ではなく、選択肢に則した小説が休憩中と終演後に読めますよっていうやつだった。

 

内容はどうしても背中が痒くなってしまう体質なので……ものすごく痒かった……まずタイトルのロゴが痒いねん……すまんて……歯が浮きまくってもう無いで……。

昼のアフト企画の行ってみたいセリフで、水石さんが「茶けてしまう」って言ってたけどこちらとしても茶けるのがいっそ自然に受け入れられた。すまんて。

背景は投影で場面によって切り替わるし暗転も上手く使われてたから面白くないわけではなかったんだけど、いかんせん自分の聴覚情報取得能力が弱くて、ちょっと眠気はあった。でも完全に意識切れなかったし寝てないから全然良い方。(寝る舞台はマジで寝る)

ラスト辺りの、突然の銃と称した台本を、全員下ろさせる演出は笑った。

 

ステージディレクターは基本情景を語るんだけど、ヒロインのセリフや心の声も語るからすごい。しかもラスボス役もやるからすごい。ギャップが。本舞台MVPだと思う。

 

ほんと主役のキャスト推しなら楽しめると思います。擬似リップ音エロ。

 

 

 

 

 

★★

【映像】ハイキュー!! 初演

 

『ハイパープロジェクション演劇 ハイキュー!!』初演

2015.

11.14-25 東京 AiiA theater Tokyo

11.27-29 大阪 シアターBRAVA!

12.5-6 宮城 多賀城市民会館大ホール

12.10-13 凱旋 AiiA theater Tokyo

 

バレーボールに魅せられた少年、日向翔陽は、やっとの思いで出場した中学最初で最後の公式戦で、
「コート上の王様」の異名をとる天才プレイヤー、影山飛雄に惨敗。

リベンジを誓い烏野高校バレー部の門を叩いた日向だが、
何とそこにはにっくきライバル、影山の姿が…!?

ボールを落としてはいけない、持ってもいけない。
3度のボレーで攻撃へと“繋ぐ”スポーツ、バレーボール。
仲間と繋いだ先に見える景色は!?熱血青春バレーボール物語、いざ開幕!

http://www.engeki-haikyu.com/2015/

 

 

2020.5.21  DMM配信にて

 

 

 

ハイキューが819円で配信されていたので。原作は白鳥沢戦で止まってたんだけど、先日一気読みして最新の43巻まで追いついたら熱ぶり返したので。

ちなみに「烏野、復活!」は劇場に観に行った。*1

 

「烏野、復活!」でも書いたがスタイリッシュ演出の癖が強い。初見の時は台詞の文字投影が非常に違和感あって苦手だったけど、この初演ではホイッスル音まで投影されてるし、公式イントロダクションの

実際のバレーボールの試合を見るように、烏野高校の試合を、観戦する。

まるで原作の試合会場に足を踏み入れたような、そんな新しい「ハイキュー!!」体験。

ハイテクとアナログが高次元で融合した漫画×演劇×映像のハイブリッドパフォーマンスで、「ハイキュー!!」を感染するという新たな"頂の景色"に挑む!

という謳い文句を見ると、漫画表現を敢えての3次元で行うことも、まあ納得というか。慣れだなこれは、と思えるようになった。「新しくて挑戦的」なのは良いことだと思う。(苦手なら見なきゃいいだけだしね)

オープニングのキャラ紹介シーンは相変わらずすっごく良い。舞台上に全員集合するの、漫画から出てきたーって感じで鳥肌立つ。

映像演出の部分はそれありきの動きをしていると思うので、全景で観たいなーと思ってしまう。あと結構メイン以外のところで色んな人が色んなアクションしているから、推しキャラ定点したいなと思ったり。この辺りのうま味は劇場観劇ならではなんだろう。

逆に、劇場観劇した時には舞台上に人が多すぎて試合が訳わからなかったから、そこは映像だとハイライトを切り抜いてくれて分かりやすかった。

カメラワークの話をすると、旭さんとのやっさんの軋轢シーンで、カメラ固定で焦点だけ前後させてたのすごく良かった。両方大事だもんね。

ライティングがスポット多いのか?そこの表情見たいんだが、ってとこでキャストの顔が影になってて、見づらいことは多かったな。

八百屋舞台で回転台使うのは凄いよね。平衡感覚ぐちゃぐちゃになって気持ち悪くなりそう。回転中に隙間に足挟んだら大怪我するよなぁとか考えちゃって、回る度に割とハラハラしていた。

 

木村飛雄ちゃんがめちゃめちゃ……めっちゃめちゃカッコいい……………。画面に映たびに一時停止押したい。公式で顔が良い影山飛雄の権化。3on3の時の「まとめて点、稼いでやる」がカッコよすぎてそこだけ何回かリピった。

個人的に、劇中演出による印象除いて、漫画のイメージドンピシャだなってのは飛雄ちゃん、旭さん、のやっさん、鵜飼さん辺りかな。あとあまりアップにならないし台詞も少ないのに、まっつんの「顔面で判断できる力」がすごい。

 

あと突然ラップ始まったのは笑った。伊達工ラップといい、時代先取りしてんじゃん。

5月いっぱい819円だし、もう一作品くらい見ようかしら。

 

 

★★★