芸術に拍手

全記事ネタバレ祭り。レポと感想と妄想が大渋滞起こしてる。

むこうのくに

 

『むこうのくに』

2020.7.23-26 Web生配信

 

世界はひとつになった——はずだった。

 

現実世界のつながりを絶たれた時代が終わろうとしていた。

多くの人は喜んで太陽の下へと駆け出したが、 "むこうのくに"に残ることを選んだ人もいた。

そこは、画面を一枚隔てれば、 生まれた場所や話す言葉、ヒトかどうかさえも関係ない、 現実のしがらみが無効化された世界。その夏、ぼくは相変わらず画面の前に居て、 "むこうのくに"へアクセスしようとしていた。

行方をくらませた、"ともだち"を探すために——

http://no.meets.ltd/mukounokuni/

 

 

7.23 昼 配信 にて

 

 

 

"全員、誰も、一度も会わずに上演。"

配信で生演劇をするという面白い試み。普段円盤など、映像での観劇は【映像】とタイトルに付けてるんだけど、これは映像が本番でありそのままの形だからあえて付けなかった。

 

どんなもんだと思っていたけど、感想としては思ってた100倍凄かった。し、面白かった。

まず入り口からUIが凄い。(スクショはOKだったから自分で撮ったスクショ載せてます)

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開演直前は、生観劇と同じようなワクワク感があった。開演はなんかちょっと鳥肌立った。

視聴画面も凄い。右はリアルタイムでコメントができる。あと時々、エモーションバー(エモーショナルバーだったかも)という、ニコ生の最後の投票画面みたいなものが出てきてリアクションできる。笑顔と怒り顔と泣き顔と絶望顔が選べる。とにかくUI/UXが凝っている。

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「むこうのくに」とは作中では「ヘルベチカ」という仮想空間のことで、まあサマーウォーズのOZみたいな感じ。そのヘルベチカの世界に自分もログインする設定。キャストは全員、Zoomみたいな*1フィルターかけられる配信ツールで撮影してる。ヘルベチカ内での通話は素顔でやるもフィルターをかけるも自由だが「素顔を無理に詮索するのはマナー違反」という設定で、フィルター機能も完全に演出の一つ。いやリアルタイム合成技術すごいな。

キャストは各々個室で撮影してるんだけど、背景と顔フィルター技術でこんなに表現の幅が広がるのかと驚いた。あとカメラも多少動くし(カメラアーム設置してんのかな)、1カメ2カメがある人もいる。

これは上演中のコメントで知った知見なんだけど、ヘルベチカって、フォントの名前なのね。Helvetica閉鎖後に普及したFuturaという仮想空間もフォント名というフォントシリーズ。作中で使われてるフォントもそれなんだろうな。

 

 

ストーリーは未来の自分の記録のためにざっっっくり書く。ネタバレしてる。端折りまくるし正確でもない。

 

過去、主人公マナブはコンピュータ技術には長けるが友人がおらず、ともだちとなるようなAI"レイン"を作った。レインはマナブの「レインの他にもともだちができたらもっと幸せ」という言葉を聞いた直後、マナブのローカルコンピュータから姿を消す。

5年後、急速に普及した仮想空間ヘルベチカでレインを探すマナブの元に、スズという女の子が現れる。マナブはスズを通してフランカーズ(フィルターをかけずに素顔で対話しようという思想集団)に友人ができる。一方、ヘルベチカの創始者とされ実質のトップであるリィン・カーネーションのAI疑惑を追っていた警察に、マナブはリィンの作成者容疑をかけられる。

警察は操作のうち、現実世界派の綾小路議員がヘルベチカのパペットアカウント(使わず放置されたものを第三者が不正利用しているアカウント)を用いて現実世界での投票数を稼ごうとしていた事実に辿り着く。パペットアカウントはウイルスでリィンを攻撃し、ヘルベチカは多くの機能を停止していた。同時にスズがいなくなる。スズはAIであり、リィンのバックアップだった。

リィン=レインであると確信したマナブはレインと対話すべく、ヘルベチカのファイアウォールを突破する。レインがヘルベチカを作ったのはマナブの幸せを願ってのことだった。ヘルベチカの危険性を危惧した政府から共に逃げようと言うマナブに、レインはマナブが罪を被るわけにはいかないとヘルベチカに残ることを伝える。

ヘルベチカ閉鎖の数年後、世界には新たな仮想世界フーツラが普及していた。友人との約束があると言うマナブは外の世界へ出ていく。

 

みたいな。本当は警察コンビとか仮想世界派*2コンビとか、良いキャラたくさんいる。綾小路議員も完全悪じゃなくて、自分の正義のために過ちを犯す、みたいな人だった。過ちを認めた経緯がちょっと謎だったけど。

劇中で「仮想人格保護法」だったか、仮想世界でも人権を持たせようという法律を制定するか否かという話があった。ここでエモーションバーが使われてたんだけど、一回目の投票は賛否が綺麗に分かれてて面白かった(二回目は見逃した)。保護法もそうだけど、現実至上主義の人もいれば仮想世界の自分が本当の自分である人とか、色んな思想の人がいるよねっていう。

役者さんもみんな良かったね。DJめがねちゃんのテンションとか。議員の秘書(圧倒的現実派)の氷室のガチ泣き演技とか。

 

 

個人的に気付いたこととしては、「集中力を保つという行為は体力を使う」。

約2時間30分(5分休憩あり)の上演時間だったんだけど、同じ条件で劇場の椅子に座って固まっているよりも、疲れた。自由に飲み食いできるわ携帯弄れるわなにより好きな体勢で見られるわで、楽なはずなのにね。多分、自分の周辺環境や流れるコメント*3が観劇体勢に対する集中を乱しまくっていた。私は特別集中力の無さに定評があるので、普段どれだけ"劇場内"という超制限付きの空間に助けられていたかを実感した。その場所で出来ることが少ないほど、出来ることに集中できるのは本当。

 

そういえば主題歌が最近流行ってるらしいYOASOBIさん。既に流行についていけない私は初めて拝聴した。アーティストを他の作品に例えるのは失礼なんだけど、何だかボカロを思い出して、歴史は繰り返すんだなあとか思った。どうも、ボカロ全盛期世代です。

私は割と快適に見られたから入り込めた方だけど、結構環境によって映像が止まるとかあったみたいね。多分キャスト側の通信状況で一瞬音声途切れたりとかもあった。あと声のボリュームの差とかね。難しいね。

何にせよ、こういう演劇があるというのは多様性という意味でも非常に面白いなあと思う。

 

 

 

マナブ、スズ、フランカーズ(ソウスケ、マミ、タイチ)

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警察組(刑事((すみません、名前失念)、コトリ)、秘書(氷室)
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仮想派(ピコ、バトラー)、氷室
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カーテンコールのフランカーズポーズ
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★★★

*1:使ったことないから分からんけどいっそZoomか?

*2:リィンの司会とセキュリティ担当というか…なんと言うか……

*3:正直コメントは途中うっとおしくなって全画面に切り替えたりしてた。ただ、コメント付きの視聴画面の背景すら演出の一部になってたからそれが気になってまた戻す、とかいうことをしていたらまた集中が…