『モマの火星探検記』
2020.
1.13-20 東京 サンシャイン劇場
2.1-2 愛知 岡崎市民会館 あおいホール
2.7-11 大阪 サンケイホールブリーゼ
2.15-16 福岡 福岡市民会館
モマの物語
宇宙飛行士のモマは、
父との約束を果たすために
人類初の火星探検に挑む。「人間はどこからきたのか、
なんのために生きているのか」火星に向かう旅の中でモマは
その意味を考え続けていた。そんなある日、モマの前に『幽霊』が現れる。
驚きながらも奇妙な出来事を受け入れる中で、
モマは少しずつ人間が生きる意味について
考えていくのであった…。
ユーリの物語
北の国に住む少女ユーリの父親は
宇宙飛行士だった。
彼女が生まれる前に人類初の火星探検に旅立ち、
帰らぬ人となったという。ユーリは行方不明となった父親に
メッセージを送ろうと、
仲間と小型ロケットを作り始める。やがて、失敗を繰り返すユーリの前に
一人の『幽霊』が現れる。
幽霊はユーリに問いかける。「宇宙の境界線はどこにあると思う?」
その姿にどこか懐かしさを感じたユーリは、
幽霊との対話を繰り返しながら、
仲間たちと小型ロケットを完成させる。
果たして、時空を超え、
モマとユーリの思いは交錯するのか――。
http://www.shachu.com/moma2020/
1.11夜 6列下手 にて
キービジュ好きすぎて両方撮っちゃった。
6列と書いてるけど実質4列目。そういえばサンシャイン劇場で視界難になったことないな。どこでも視界が確実に確保されてるのは本当に大事。
2017年の時も気になっていたんだけど、どうしても時期的に観に行けなかったから、また再演してくれて本当に有難い。劇場がサンシャイン劇場ってのも良いですね。またやるなら銀河劇場でも良いな。
そして今回のキービジュアルが綺麗と可愛いを兼ね備えてて、ドツボだった。雰囲気好きすぎる。
所感
2017年観られなかったの本当に後悔しかない!!観たかった!!!悔しい!!!!!
めっっっっっっちゃ良かった!!!
いや本当、久しぶりに観終わった直後から「もう一度観たい」と思える舞台だった。余韻に浸りたすぎて、いっそアフタートーク出ようかな…と思ってしまったくらいには、一人の時間が欲しかった。とにかく、いろんなものが「綺麗」だったなぁ。
本物のロケット発射映像だけで泣く人間なので(本編は映像0です)、モマ達のロケット発射カウントダウン演出だけで泣いてた。ジュピターの幽霊のところでボロボロ泣いてた。派手な演出はないけれど、録音機のくだりでおもむろにユーリの父がモマだと分かり始める辺りでもポロポロ泣いたし、ユーリの祖父とユーリが見ていた幽霊が繋がった時もホロホロ泣いた。泣いたところを挙げるとキリがないくらいに泣いてたし、普段泣くにしてもすぐ止まるから、こんなに涙が出てくることに自分で驚いた。
モマは演出が「泣かせよう」としている感じがしないのが良い。分かっちゃうよね、「泣かせよう」とする演出って。泣ける演劇が必ずしも良いとは限らないけど、泣く行為とは、心が動いた結果の最大のアウトプットだと思います。
(泣いた泣いた書いてるけど、笑うとこは本当に笑った。スコープスのショートコントとかおじさんのチキン説得とかモマの再プロポーズとか)
一個引っかかったのはアイザック司令官の性別が変わったことで、家族を顧みず宇宙を目指してしまう"冒険気質"の人間の性別が偏ってたことかな。ユーリのお母さんが「どうして"男"ってこうなのかしら」(ニュアンス)と嘆くけど、ここに該当するのが、ユーリの祖父、モマ、そしてユーリ。そのユーリは女の子だけど、「ボクとか言わない、女の子なんだから」と保安官の叔父さんに諭されたり、リボンしてないと女の子だとお父さんに伝わらないと思われてるような、"男勝り"。そして冒険気質に該当しない、宇宙飛行士になりたかったが家族が捨てきれずグランドスタッフになったアイザック司令官は、元々男性キャストだったが今回から女性キャストになったことで、「冒険気質なのは男性」という印象だった。まぁ観劇後ぼんやり考えてたら気付いたことなんだけど。オカルトのこと無視しちゃってるけど。何でアイザックの性別変えたんだろうね。
観劇前、少年社中公式Twitterで「モマの火星探検記は観る度に感じるものが違う」舞台だということは聞いていたんだけど、本当にその通りだと強く思った*1。後述のアフタートークでも語られていたから皆思うことかもしれない。きっと誰かには刺さるんだろうなと思う、何個もの何種類ものセリフ、シーンがある。何がどう思ったかは、今のところ多すぎて正直言語化できないんだよね。とりあえず「やりたいと思ったことをやればいい」は勇気が出るし、「全部繋がってるんだ」もなんか、生きようってなるから好き。
演出について
舞台セット、星空とストーンヘンジ(劇中ではストーンサークル)に上手から青い光が射してるのがとても綺麗。ちなみに舞台セットは一切動かない。場面転換しても舞台セットが全く動かないの久しぶりに観たけど、普段より集中できる気がする。
モマ、とにかく光の演出が上手いなと思って。とにかくすごく綺麗なんだよね。これは観てくれとしか言えないんだけど。青いライトって、特に異世界に連れていってくれるような気がする。ライト+透明な球体による宇宙空間演出もすごく良かった。透明な球体(宇宙服の暗喩)が周りのライトを拾って、その反射が球体の模様の一部になるんだよね。宇宙服の頭のガラス面に、色んなものが反射して映りこんでるのを思い出す。
少年社中は毎回オープニングが最高だが、今回も最高すぎた。ダンスカッコよすぎ。群舞中のライティング良すぎ。あと100回観たい。OPだけ少し日本色が強くなるのだけど、"土"の空気が強い日本的演出であっても寒色ライティングも相まってどこか"宙"の空気があり絶妙なアクセントになっていた。掛け声が結局なんて言ってたか分からなかったけど笑 トーザイ?ナンボクじゃないと思うが…。(追記:単純に「トザイトーザイ」らしい。東西声という、歌舞伎やらの開始合図らしいですね。知らなかった。)
衣装について
キービジュについては上で言及したけど、今回も宣伝用だけとは思えないほどキービジュ衣装が天才的だったし、舞台衣装も天才的だった。少年社中は本当に衣装が良いよ~~~全員の衣装見たくてパンフ買ったもん~~~。
私が2017年モマを見逃したことを嘆いてる理由のひとつに、生駒ユーリの衣装がめちゃくちゃに可愛かったことがある。やっぱりユーリ衣装はトーンが明るい2017年版が好きかな。今回のも可愛かったけどね。
2017年の衣装、他の人たちはどんなのだったのかなと気になって画像探したんだが、いやマイクロスコープの顔見えてるやん!!って笑っちゃった。今回の全身着ぐるみ(?)は役者さんの名前出てる分、かなり衝撃だったので…。しかし脚は身体に収納して座れるし(フォルム可愛い)、腕も伸び縮みするし、何気にマイクロスコープ、ギミック凝ってる。
宇宙飛行士の衣装が、全員が靴まで真っ白になってたのはすごく良かった!宇宙飛行士感と、何より人が多くても「宇宙飛行士メンバー」が一発で分かる。全員全身白だからこそ上半身の違いの細かい部分までより分かって、その違いが見てて楽しかった。靴の「ASI○S」が妙にリアルで、逆に現実と繋がってる感じがして私は好き笑。モマとユーリの「親子」感は2017年のが強く見えるけどね。しばらく親子だと気づかなかったのは私が鈍いせいもあるんだけど多分、2017年の方が気付くの早かったんだろうなぁ。
キャラについて
生駒さん初めて観たんですけど……ユーリ可愛かったね……ボクっ子の似合うこと似合うこと。ああいう無邪気さって、一歩間違えるとウザくなる臭さがあると思うんだけど全然そんなことない気持ち良い中学生キッズであり、ロケット作りのリーダーだった。
矢崎さんはもう役者として謎の安心感がすご。なんだろうこの安心感。キャラとしては、お父さんだけど若さと危なっかしさのある可愛らしいお父さんだった。しかし「どうして宇宙に行くのか」の質問に答えられないの、多分宇宙飛行士としては圧倒的にアウトなんだけどどうやって人類初の火星探検隊に選ばれたの笑
"おじさん"は愉快なおじさんで面白かった。最初出てきて語り始めた時、暴れ狂ってるからどうしたってなったけど。ユーリとの掛け合いが、幽霊なのにひたすらほのぼのできて楽しかった。こういうアグレッシブ愉快なおじいちゃん良いなぁ。
宇宙飛行士メンバーはそれぞれ衣装と祈り方から国籍が見えるのが面白かったなぁ。調べたら名前の由来が各国の作曲家なんですね。ホルスト→イギリス、ミヨー→フランス、ヴェラ→ブラジル、バルトーク→ハンガリー、ガーシュウィン→アメリカ、タケミツ→日本、かな?
ガーシュウィン、おでこちゃんだし髪長かったから、メサイアで要やってた山崎くんだとしばらく気が付かなかった。いやすんごいダンス上手いし、そんな良い二の腕してたの……??メサイアコート全身隠すから知らなかったよ……うっかり惚れるかと思った……てかスタイル良………ともかくすごいカッコよかった……ビビるわ……。
スコープスが可愛くてほんとに好き。マイクロスコープが何気にお気に入りなんですよね。顔見えないし「ピピッ」しか言(?)わない*2けど、顔見えて口が達者なテレスコープとの対比が明確で、妙な存在感を醸し出していたように思う。録音消去したホルストへのいーけないんだーいけないんだーの歌でホルストに「パカパカすんな!」て言われてたのは笑った。あの手のパカパカ結構響く。
テレスコープ、鈴木勝吾さんすっっげえなって。語彙力死んじゃったけど、すっっっげえなってなった。わたし人間のロボットモーションオタクなんですけど、新しいタイプのロボモーションを見てしまって大層興奮した。形容し難いタメのあるヌルっと感。良いです、ずっと見てたい。鈴木勝吾さん、「ピカレスク◆セブン」のどどセクシーなマクベスの印象が強かったからびっくりしたな…。
アフタートーク※ニュアンス。
・ゲスト 山川ありそさん
正直アフトあるの観劇2時間前くらいに知ったんですけど、個人的に今回ありそさんがキャストにいらっしゃらなかったのが悲しかったので、アフトで見られるの嬉しかった。
初っ端、視界の毛利亘宏さんだけ入ってくるはずが元気に諸星さんも一緒に入ってして「アッまちがえたっ」と引っ込む。一同ツボりすぎてしばらく笑いを引きずる。
感想を聞かれたありそさん「ちょっと嫌なことがあってから来た人、友達に子供が産まれた知らせを聞いてから来た人、オーストラリアの火災のニュースを見てから来た人、生命体が存在する星が見つかったニュースを見てから来た人、(etc.)、全員違うものを感じるはず。みんな何かしら持って帰れるはずだし、自分も今日持って帰る。」
ありそさん「昔より宇宙との距離感が変わった。ここ2年間でも変わってません?イー□ン・マスクの火星移住とか某社長の宇宙旅行のとか、昔より現実味を帯びてる」毛利さん「モマも初演はもっとファンタジーだったよね」
ありそさんの役をやると聞いてどう思った?と毛利さんに聞かれた赤澤さん「えっ…やだ……って(笑」「(笑)ありそさんてやっぱ、独特な雰囲気あるじゃないですか。でも毛利さんにも『分かってるとは思うけどありそさんはありそさんのハカセだから気にしないで自由にやって』と言ってもらえたから気にしないでやれた」(もっとポジティブな結論言ってたはずなんだけどすみません)
共通質問「なにか皆で作ったものの思い出」
毛利さん「某鉄道会社から四坪くらい敷地借りて(そういう時代だった)、秘密基地みたいなの作って舞台作ってた。そしたらその近くで全裸の凍死体が見つかった」(一同ドン引き)
赤澤さん「卒業制作で、皆で木を寄せ集めたオブジェを作ってて、それを乾かしてた。その期間中、使用禁止ボールをどうしてもドッジボールに使いたくて(『そういうボールあるじゃん?』諸星さん『あるある』)、何度も怒られてて、また怒られてたんだけど、怒りのパフォーマンスとしてほうきぶん回してた先生の手からほうきがすっぽ抜けて、そのオブジェに当たって壊れた」「だから物を作る楽しさも壊れる悲しさも知ってる」
生駒さん「中学生の技術の授業中、中学生って剣とか好きじゃないですか(一同『中二病』) 。だから木をひたすら鋭利に削ってニス塗ってて、でそれにニソス様って名前付けて(なんかソスだか付けるのハマってたらしい)、ひたすらニソス様〜ニソス様〜って鋭利に削った木を作って中二病仲間の女の子と二人で遊んでたのがすっごい楽しかった」
諸星さん「高校の文化祭でお化け屋敷作ってる時、寿司屋でバイトしてる友達が突然『出前頼めるから頼もうぜ』って言い出して、隣の空き教室に出前頼んでサボってた。そしたらちょっと怖めの先生が『何やってんだお前ら!』って入ってきて、『…寿司食ってます』て言ったらその先生、ブリ一個食べて帰ってった。いやこの先生……脂のってんな〜って」一同「うまいこと言う…」
ありそさん「高校演劇って気持ちが先行しがちじゃないですか。その先行した気持ちで、次の演劇ラストシーンで川通して(何重にもしたビニールシートに水溜める)その中でザブザブする演出がしたいってなって、で実際公民館だか借りてそれをやろうとした。公演前日に水張って、じゃ明日頑張ろうーってなって次の日来たら、水が一滴もなかった。その水はどこへ行ったかというと……まー床ですよね。水張り直して公演はやった。」毛利さん「現状復帰は大丈夫だったの?」ありそさん「…黙ってるしかなかったですよね」
モマの火星探検記は、観る人と世界のその時の状況や環境によって、感じるものや感じることが変わってくる演劇だから、また何度でも観たいと思うし、たくさんの人に観てほしいなぁ。とにかく、観てほしいなぁ。
★★★★★
*1:https://twitter.com/shonen_shachu/status/1215640375240429568?s=21
*2:あのピピッて、誰がタイミング操作してるのだろう…