芸術に拍手

全記事ネタバレ祭り。レポと感想と妄想が大渋滞起こしてる。

点滅する女

 

『点滅する女』

2023.6.14-25  東京芸術劇場シアターイース

 

蛍が集まると、小さな宇宙が生まれるのよ─
姉の語るおかしな話が、私は好きだった。
 

初夏。緑眩しい、山あいの田舎町。
父、母、兄と共に実家の工務店で働く田村鈴子は、家族の間にある静かな歪みに悩んでいた。表面的には仲の良い田村家だったが、5年前、家族の中心だった長女・千鶴が亡くなってから、その関係はどこかおかしくなっていた。
そんなある昼下がり。一人の見知らぬ女が、田村家を訪れる。
「千鶴さんの霊に、取り憑かれてまして」
女の奇妙な言葉をきっかけに、ぎりぎりで保たれていた彼らの関係は、大きく揺り動かされ─

https://www.geigeki.jp/performance/theater333/

 

 

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6.21夜  G列センター  にて

 

 

 

水石亜飛夢さんが出演しているので観に行った。

普段2.5とか、キャラクターが記号的でThe創作みたいな作品ばかり見てて、五感的にも精神的にも派手に上がる作品に飼い慣らされてまして……最近特にぶち上がりまくってたし……。

点滅する女、キービジュ暗いしタイトル意味分からんしストーリーもまったく分からないし脚本演出の雰囲気も分からんしの分からんことだらけで、ぶっちゃけモチベは低かった。

 

 

いや面白かったわ。

興味無いものに対する集中力がカスな私からすると、「普通に2時間集中して観られた」ってだけでだいぶ満足度高い。

一度も見たことない方の脚本だったから、どう着地するかの点でもラスト付近はハラハラしてしまった。最後、鈴子が千鶴と川で心中して千鶴がもう一度死ぬ…とかだったらどうしようとか思ってたけど、全然そんなことはなくて良かった。鬱展開を見すぎ。ちゃんと前を向ける作品で良かったです。

2.5界隈にいると脚本演出家がほぼ固定になってしまうので、全く違う知らないテイストを浴びられるのも楽しい。

 

 

演出はライティングが特に良かったなあと思う。

冒頭、「薄暗くて目が痛い」とかあるんだって思った(良い意味で)。別に客席までギュンギュンまわるライトとか目が眩むような煌めきを表現するライトとかがあるわけじゃないし、どこが印象的だったか覚えてないんだけど、全編通して"暗さ"が絶妙だったというか。

しかし私が観た公演がカメラ収録日だったんだけど、あの暗さで映るんか……Blu-rayじゃないと画質ヤバそう……とか思っていた。

千鶴の日記?が今から過去へ遡ってくの、初見だと後半でようやく気付く感じだから、もう一度観たい部分。

 

ストーリーは初っ端、ゲロやばキモ不倫の話でゲロゲロしたせいか、その後は借金と…あとなんだっけ……という記憶の飛びっぷり。不倫父(金子さん)の表情筋凄すぎた。あの痙攣って意図的に発生させられるもんなんだ。

最後の千鶴(岡本さん)と鈴子(森田さん)の蛍のシーンは特に良かった。鈴子の長台詞も良かったし、惹き込まれすぎてぼわっとしたスポットライトを見つめながらボーッとしてしまった。

千鶴が妹の窮地で川に飛び込むときに、「とぅっ!」とか言うタイプで良かった~。千鶴のキャラ好きだな~。ニコニコしながら後方腕組み彼氏ムーブしてるあたりが。

「加速主義」というワード、またひとつ賢くなってしまった。関係ないけどSimejiでかそくしゅぎと打ったら検索候補に「家族主義」って出てきてビビった。

 

そんで贔屓目含めても水石さんの演技がめちゃ上手かったです。違和感ないというか、そういう人間はそういう反応するよね、みたいなリアルな人間のトレースが上手いというか。千鶴の憑依は一切信じず現実見てるとこあるのに、己の現実逃避でつくった1000万の借金に対しては現実見てないという、都合の良さがまたクズっぽい。あれ亜飛夢くんまたクズ役ですか?

最後の「朝からケンタッキーって…」の台詞が、その時私が思ってたことドンピシャすぎて湧いた。

キャラ的には交番のおまわりさん(稲川さん)が好きだった。あの人最後まで可愛いだけの存在だったな。

 

 

直前にアフト付き回だと気付いた。ゲストの行定勲さん、森田想さん、岡本夏美さん、演出の山西竜矢さん。

山西さんは行定さんのことを親だと思ってるけど、行定さんは「点滅する女」のタイトルを見た瞬間に「蛍の話か」と思ったそうで、子の解像度高すぎんか?

普段見てる2.5若俳のアフトってバクステとか演じる上での苦労点とか、キャスト本人が関わる話しかほぼしないから、ストーリー考察的な話の展開だったのが非常に新鮮だった。過去の記憶が曖昧すぎて幻をつくってしまう話、めちゃくちゃ分かる…ってなった。私も自分の目で見られる角度は過去に確定しているのに、何故か別方向からの景色が思い出として定着していることがあるので……。

 

 

余談だけど、カタログ並の厚さのフライヤー束を久しぶりに見た気がする。10数年前の観劇ビギナーだった頃はこういうフライヤーから知ってる役者(主にテニミュ1st)の名前を見つけて、興味湧いたものを手当り次第に観に行ってたことを思い出した。あの頃はチケ代が安かったな……。今回の舞台も4800円で、今どきそんなコスト抑えられるんだ!?と思った。キャストのギャラは置いといて、別にセットがちゃちいわけでもないし、毎回食べ物がマジで消えものだし。

てか田村家、毎日、下手したら昼夜、ケンタとコロッケ生活だったんかな……せめて夕飯シーンは違うメニューであれ………。

 

 

 

 

 

 

★★★