『GRIMM』
2020.8-13-16 六行会ホール
兄・ヤーコプ・グリム(演:高崎翔太)と弟・ヴィルヘルム・グリム(演:橋本祥平)はドイツ各地を巡って、古くから伝承してきたメルヒェン(昔話)を収集し、残酷な部分を切り落として『グリム童話集』を完成させた。
やがて『グリム童話集』は優しい世界観と奇妙な展開で多くの読者を魅了し、世界中で愛される物語となった。
しかし平穏な生活を送っていたグリム兄弟の夢枕に、正体不明の悪魔が現れる。悪魔の目的は、優しく編纂された物語を残酷な話に戻すこと。そんな悪魔の計画を阻止すべく、グリム兄弟は改ざんされた童話の世界に潜り込む。そこには彼らの想像を絶する「残酷な世界」が待ち構えていたーー。
8.13 昼 B列下手 にて
2列目かと思ったら。最前列潰されてたので最前だった。初日最前初めてかもしれん。
六行会ホール改装後のこけら落とし公演らしい。改装してたの知らんかった。てことはあのお手洗いのデザインの敗北蛇口もなくなってしまったのかしらと思ったら、お手洗いはそのままだった。椅子が綺麗になってた。つまりこの椅子に初めて座ったのは私。
YouTubeで企画会議を生配信して、ファンのコメントやTwitterツイートから物語やキャラクター設定が出来上がるという、視聴者参加型オンライン企画会議"キカクのタネ"、面白い試みだった。何回か見てたけど本当に"無"からのスタートだし、企画ってこういう風に出来上がるのかーこの時期にパンフ編集&発注でも間に合うのかーなど、色々勉強になった。大して参加はしていないけど、進捗を見守り、視聴者のアイディアをもりもり盛り込んで出来上がった作品だと思うと感慨深いものがある。
しかしグッズまでアイディア募集するとは思わなかったし、パンフに載せる二次創作(いや視聴者も制作の一員だから一次創作なのか?)を公式が募集するとはもっと思わなかった。そして開演一週間前に最速先行のチケット発券開始というなかなかのギリギリスケジュール。中の人も割と追い詰められてたんじゃなかろうか。「これはキカクのタネじゃなくて、ナヤミのタネ」(by橋本さん)
ギリギリと言いつつ、開けてびっくり、この短期間でここまでやれるのかという完成度の高さ。
まず会場入った瞬間、舞台セットの綺麗さに驚いた。思ってた10倍、豪華で素敵だった。
そしてキャスト2人のビジュアルがあまりにも最高だった。とても似合ってて、開演して明かりがついた瞬間「綺麗」という感情しか湧かなかった。衣装も最高。最初のポーズって銅像か絵画と同じポーズなのかなぁ、要確認。
ストーリー、前半はかなりコメディに振ってて後半は一気にシリアスになる。でも決して重いわけじゃなくて、上演時間90分と短めで、すっきりわくわく観られた。
二人芝居なので一人何役もやるんだけど、これがまた振り幅すごくて面白い。橋本さんの悪魔とか本気で別人かと思った。基本ヴィルヘルムの悪夢中心に進むから、高崎さんのが兼役多かったかな?突然のカエルの被り物なんだったの笑
今回出てきた童話
・いばら姫
・怖がることを覚えるために旅に出かけた男
・鉄のストーブ
・歌う骨
・リュックサックと帽子と角笛
前半の振り切り方は最高に振り切っててかなり笑わせてもらった。「濃厚接触」「GO TO」とかの時事ネタ、「緑効青汁*1」「撃弾ハンサム*2」「zozozo town*3」とかのキャストネタ、ポーズ付きの「うるせえ!!行こう!!*4」とかの漫画ネタ、吉谷さん相当楽しんで遊んでるなと。
いばら姫とババアのシーン、配信の公開読み合わせで何回か見てるのにそれでも笑っちゃう。
鉄のストーブの前半までかなりギャグに振ってるのに、後半からちょっと真面目になっていく。鉄郎*5と姫にちょっとときめいてしまった。
そこからの歌う骨で一気に不穏な空気に。前半3つはラブロマンスなのに、後半2つはあまり関係の良くない兄弟の話なんだよね。リュックサックと帽子と角笛は、あらすじ読んだ段階で何だこの胸くそストーリーと思ってたけど実際演られると、恐怖だった。ここの橋本さんめっちゃ怖い。
ただ、物語後半から、私の理解力が追いつかなかった。初日の朝、ストーリーに出てくるグリム童話が公開されて、若干ネタバレ食らった気になったけど、全然知らない童話ばかりだったのであらすじを先に読めたのは幸い。これ知らなかったら情報過多で余計に混乱してたと思う。一瞬でも気を抜くとすぐ置いてかれるスピード感は良いのだけど。特に、現実と夢の世界の境目が分からなくて、「今キミはヤーコプなのか悪魔なのかそれともヴィルヘルムの妄想のなにかなのか!?」と大混乱。だからオチがちょっと分かってない。複数回見れば分かるだろうか。
"本"の演出が素晴らしい。
稽古期間も少ない中、役者が台本を完全に覚えてなくても「読める」ような本の演出(朗読パートというらしい)は、この題材だからこそであり上手いなーと思った。またそのことを逆手にとって、(台)本が見えないことを笑いに変えてたのも良かった。中身も普通の台本みたく縦書きではなく、ちゃんと横書きになってたし。
リュックサックと〜だったかな?本を渡し奪い、交互に読み合っていくシーンはカッコよくて、でもゾワゾワした。
途中「種が芽を出し実をつける」(めちゃくちゃ曖昧)的な台詞があって、キカクのタネだからこそ敢えて入れた台詞なのかなと。
ヤーコプが指差す時に中指使ってるの、高崎さんの癖なのかな〜と思ってたんだけど、パンフ見たらそういう設定でわざとやってるらしくてちょっと感動。
本当に面白い企画だったので、是非キカクのタネ第2弾もやってほしい。
★★★