芸術に拍手

全記事ネタバレ祭り。レポと感想と妄想が大渋滞起こしてる。

黑世界

 

『黑世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~』

2020.

9.20-10.4  東京 サンシャイン劇場

10.14-20   大阪 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

 

 

9.20(雨下) 11列上手寄り

9.21(日和) 2列下手

にて

 

 

 

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備忘録のためストーリーがっつり書いてます。相変わらずネタバレ。

 

 

 

雨下は通路横だし、日和は1列目潰しの最前列だったし、なんだかコロナ禍での私の観劇のチケ運が異常に良い……。

普段の何倍も男性客が多くてびっくりした。1/3は男性だったのではとすら思う。

 

私TRUMPシリーズでリリーが一番好きなんですけど、黑世界発表された時は大暴れしたよね。念願すぎて。

元々「キルバーン」てのをやる予定だったけどコロナで出来なくなって、音楽朗読劇の黑世界をやることになったとか。早くコロナ明けないかな。

そういえば感染症対策は靴の消毒マットまであって完璧だったんだけど、来場者登録だけが分かりづらい!配布された特典マスクに付いてる紙の一番下に小さく載ってた。

 

 

二編通して、音楽朗読劇というからには歌うのは分かってたけど、こんなに動くとは。朗読劇と言いつつかなり動くのは極上文學シリーズくらいかと思ってたけど、それ以上に動いてたかもしれない。

しかも今回は特に照明の演出が目を引いた。多色多彩で、心理描写、血の表現、素晴らしかった。

雨下初日はスタオベなかったけど日和初日はスタオベした。初めて最前列でスタオベした~~気持ちいい~~~。

 

鞘師さんが歌上手くなりすぎてて驚いた。新良さんとデュエット張れるの凄い。ずっと聞いていられる。

リリーのシルエットが最高なんだ。ダンスの手首のしなやかさが最高なんだ。

衣装が今回膝上なんだけど、この"年端もいかぬ少女"らしさよ。ワンピースの腰に切り返しがないのに驚いた。それであのフィット感。コートも凝ってて可愛いしあれを急いで羽織る時のリリーさんの勇ましさが好き。

 

ヴァイオリン&ヴィオラとチェロは生演奏なのだが、奏者さんが出てくるとそわそわしてしまうしチューニングから照明が落ちるのぞくぞくした。

 

 

 

 

~雨下の章〜

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初日は雨が降りました(地元)

全部雨にまつわる話。でも傘は一度も出てこない。

みんな歌が上手い。

雨下の方が、ちょくちょくLILIUMクランの子たちのセリフ出てくるよね。リリーの大切な記憶なのか、でも忘れてる描写もあるからもはや潜在意識なのか。

 

 

1. イデアの闖入者[作・末満健一]

リリーとシュカの出会いの話。リリーのストーリーパートナーとして、後にチェリーと命名される幻覚(新良エツ子さん)が現れる。夢を見るリリー。夢から醒めさせたのはシュカと名乗る、リリーを「見ている」だけだという男。

 

夢の中では、リリーはクランから卒業していて、父と母が出てくるのがもうしんどい。そしてリリー目線での、クランの仲間たちのことが語られて泣きそうになる。シルベチカもちゃんといる。

LILIUMのラストシーンは何度見てもダメだ。この絶望が好きだ。

リリーはどうやら、不老不死の謎解明のファクターとしてヴラド機関から狙われているらしい。ヴラド機関の規模が分からないが、これだけTRUMP情報持ってて不死者野放しにしてても、世間一般ではいまだTRUMPが御伽噺だと思われてるのが不思議ではある。

シュカこと松岡さんの歌が、発声から違う。ミュージカル俳優と歌手のハイブリッドって感じがする。

 

2. ついでいくもの、こえていくこと[作・宮沢龍生]

橋職人ホオズキ親方とその一番弟子シーメンの話。北へ向かいたいが橋が崩れて渡れないということで、親方たちの橋作りに付き合うリリー。ヴァンプに家族を殺されたホオズキ親方は昔ヴァンパイアハンターだったが、ヴァンプを殺し続けることに疲れ、石職人であった育ての親の意志を継いで橋職人になった。北への橋がもうすぐ完成だというところで、大雨による土砂崩れで橋が崩壊。その時シーメンを助け、代わりに濁流に飲まれた親方は後に息を引き取る。ホオズキ親方が遺した技術書と手紙で、橋作りの意志を継いだ「一番弟子」シーメンは5年後橋を完成させる。

 

端的に、良い話だった。大久保さんのシーメンが手紙を読むところは泣ける。永遠とは誰かに自らを継いでいくこと。継いで超えることが、有限の生命に出来ること。

じゃあリリーはなんだろうね、と思った。一人で継いでいけるけど、誰も超えられないような気がする。停滞した存在。

 

3. 求めろ捧げろ待っていろ[作・中屋敷法仁]

ライザンというイケメンヴァンパイアハンターが、ハンター辞めたいが助けを求めている人がいるからと剣を捨てられない話。その裏、ライザンに会いたいから、自らの血でヴァンプを誘き寄せる過激派ライザファン、老女マルグリットの話。ライザンに会い助けてもらう最中、マルグリットはヴァンプに殺されるが、それでもその死に際は恍惚の中にあった。これで助けを求める人はいなくなり、ヴァンパイアハンターを辞めることができるかと思いきや、ライザンにはなおマルグリットのような女性ファンが大勢いた。

 

問題作!!!!!

ここのリリー含めた全員、始終テンションが飛んでるのでいっそ付いてけない人もいるのではないかと思う。私は楽しかったな……というのが一番の感想だけど、エグイな……と一番思ったのもこれ。血肉(身銭)を削って推しに会いに行くオタクたち……。やめろ。

ライザンもライザンで完全にやぶさかでない感じなのも狂気だった。血で血を洗うというか。

曲で手拍子すると思わなかった。これは現場行って良かったなと。しかし本当に、本日のMVPばりにいけぴが最高だった。終演直後、一番記憶に残ってた感想が「いけぴが良かった」だった。

ところでライザンって「雷山」かな。*1

 

4. 少女を映す鏡[作・末満健一]

恋に憧れる、老女の見た目をした少女の話。ある屋敷に泊まったリリーはその主である老女アイダに鏡の中に閉じ込められる。アイダは歳をとる速度が人の5倍であり、見た目は老女だが本当は15歳の繭期のヴァンプだった。自分の本当の姿がリリーだと思い込み、いつか恋をしてみたいというアイダ。ある日クランを抜け出してきた繭期の少年が屋敷を訪れる。人の心の形が見える繭期症状を持つ少年は、街で見かけたアイダの心の形に恋をしていた。アイダは少年が老女である本当の姿を見ていないことに恐怖し、少年を拒絶する。月日が経ち、アイダの身体年齢が90歳になった頃、アイダはリリーを解放し、息を引き取る。心が無くなった老女のアイダの姿を見てなお、少年は「綺麗な人」だと言う。

 

鏡の中に閉じ込められるって、まあお耽美なシチュエーション。

基本リリーが鏡のアーチの中にいるまま話が進むので、ループものの感覚だった。

途中からリリーが積極的にアイダの繭期に付き合うことにしたのは、同情だけなのだろうか。「恋をしたことがあるかは忘れてしまったけど、痛みを伴わない恋はないと思うわ」みたいなリリーのセリフがなんだか好き。

最初淀んでるんだけど、終盤のアイダの繭期が終わる頃から空気がどんどん澄んでく感覚がした。

 

5. 馬車の日[作・降田天]

息子をクランに送り続ける女性と従者の話。ある雨の日、リリーは息子をクランに送る途中だという、通りすがりの馬車で街まで送り届けてもらう。彼らに別れを告げた数年後、同じ土地でリリーは再度馬車に拾ってもらったがそれは前回と同じ、年老いた女性メイプルとその息子ヘイゼル、従者シダーの馬車だった。しかし「初対面」だと言われるリリー。疑問を持ちながらの道中、ヘイゼルが馬車から逃げ出そうとする。その時ヘイゼルが「タイを綺麗に結べている」ことに気づいたメイプルは「お前はヘイゼルじゃない」と錯乱。ヘイゼルをシダーが撃ち殺す。同じく撃ち殺されるも、不死であるリリーが今度はヘイゼル役として連れていかれ、毎年馬車の日ごとにクランに送られては「ヘイゼルじゃない」と気づかれ、撃ち殺されることとなる。本当はシダーが本当の息子ヘイゼルであった。ヘイゼルはかつて厳しい母に嫌気がさし、母のイニシアチブをとりヘイゼルをこの世から消す。ヘイゼルを探し続ける狂ってしまった母への罪滅ぼしのため、シダーとして毎年繭期の少年たちを捕えヘイゼル役に仕立て上げ暮らしていた。ある年、例年より早くメイプルはリリーがヘイゼルじゃないと気付く。シダーが発砲に躊躇った瞬間、リリーを守るように躍り出たメイプルはシダーに撃たれ絶命する。

 

これは完全にループもの。こっちはリリーの意思ではないとはいえ、寿命まで付き合わなかったパターン。

この辺りから若干お尻痛いなと思い始める。ちょっとゆっくりな曲多めだと、というか、2,3話目がアップテンポだったからね。

「雨が降る前、〇〇鳥(失念)が鳴くのを聞いた?」の辺りのメイプルこと樹里さんがめちゃくちゃ怖いの。ホラー。最初メイプルはまともそうなのに、ここで一気に「あ、こいつはヤバいやつだ」という印象を植え付けてくる。

最後、シダーもといヘイゼルが「母を一人にしてはいけない」と言った後は、回想?ちょっとここよく分からず。

 


6. 枯れゆくウル[作・末満健一]

リリーとシュカの終わりの話。かつてヴラド機関時代のシュカは、リリーに対し実験台として非道な行為を続けていたが、ある日スノーフレークの花をリリーに見せる。花を見て泣くリリーを見たシュカは、リリーに心が残っていたことを知る。残酷な行いに耐えられなくなったシュカは、ヴラド機関からリリーを解放した。その後、ヴラド機関から盗み出した薬ウルを使い不老の身体でリリーの行く末を見守ってきた。しかし100年間でウルは底を尽き、シュカはリリーの目の前で力尽きる。

 

正気を失わず心を失わず、「悲しみ」の感情を抱えたまま永遠を生きる理由に、「ソフィー・アンダーソンにはなりたくない」というリリーが強くて美しくて、好き……ってなった。しかし再会して目の前でそんなこと言われたらと思うと、ソフィーの狂気加速するフラグ。

今回の我守護枠はシュカだったけど、確かに見守ってくれていた(しかも割と助けてくれる) 。シュカが目の前で逝った時、リリーはまた「悲しみ」を抱えたのかな…。

最後に歌った曲だったか忘れたが、サビが『永遠の繭期の終わり』のアレンジに聞こえた曲があったような気がした。違うかもしれない。曖昧。

 

 

 

 

 

 

~日和の章~

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初日は晴れました。

上原さんの歌唱力と歌詞の聞き取りやすさがぶっちぎってた。朴さんの振り幅が凄すぎる。

YAEさんとMIOさんが本気でどっちか分からなくて、3話と5話がどっちがどっちやってたのか分からなくて申し訳ない。紫蘭と竜胆も途中で入れ替わってたらどうしよう。

OPとEDのスモークは雨下だけなのかしら。*2

日和は末満さん脚本以外、リリーが聞き手な印象。

 

 

1. 家族ごっこ[作・末満健一]

家族だという3人との出会いの話。行き倒れたリリーは5歳のラッカ、7歳のノク、ラッカの父エルマー、3人の吸血種の家族に拾われる。ラッカとノクはリリーに懐き、家族同然の日々を過ごすこととなる。特にラッカはリリーを「ママ」と呼び、ずっと離れないことを約束させるほどリリーが大好きだった。5年後のある日、かつて血盟議会の優秀な議員だったエルマーの復職の可能性を断つため、反対勢力がエルマーらを襲う。3人の家族を守るため、リリーは敵を皆殺しにする。不死の力を見られたリリーは家族の元から去る。

 

初っ端、紫蘭と竜胆役を中山さんと三好さんがやろうとしたところ、SPECTER初演のオタクは悶えた。あれ最初から台本にあったのかな…いきなりギャグを入れてくる意味が分からんのだが……SPECTERのすぺくたーへのサービスだったんじゃないかと勝手に思っている。

5歳の朴さんと7歳の上原さんが観られる貴重な体験。

せいぜい15前後の女の子に対して「ママ」呼びにかなり違和感あったんだけど、ラッカは母親への憧れはもちろん、リリーが積み重ねてきた(果てしない)年月を、見た目という先入観無しに無意識に感じとったのかな…と思った。

リリーの無双シーンではトルソーが敵として使われてるんだけど、これを動かしてる人(三好さんかな)の動きがえらく俊敏でカッコよかったっていう最前列感想。もはやスライディングしてた。

 

2. 青い薔薇の教会[作・葛木英]

許したい人と許されたい人の話。ある人間種の村の神父ブルボンは、かつて繭期だった吸血鬼の青年モスカータに妹を殺された。繭期の衝動と分かりつつも罪悪感で自分が許せなかったモスカータはブルボンに罪を告白しどんな罰も受けると言う。それでもブルボンはモスカータを許すと、モスカータに妹が世話していた「不可能」という花言葉を持つ青い薔薇の世話をさせることになる。数年後薔薇は咲き、2人は良き友となったように見えた。しかしモスカータはどうしても自分が許せず罰を欲し、遂に村の人間たちに全てを白状する。モスカータを殺せと迫る村の人間たちだが、裁けるのはブルボンだけであった。ブルボンは本当はまだモスカータを許せずにいたが、「不可能」の花が咲いたように、許すことを諦めたくないと、モスカータに「生きてください」と言う。

 

脚本、すごいもん考えるわ。そうだね、繭期の自分の行為が許せない吸血種と、その行いを許したい人間もいるかもしれないよね。ブルボンとモスカータは本当にお互い、良い人なんだろうなと思う。

石舟さんの時から好きだったけど、相変わらず三好さんの演技が素晴らしい。目から血が流れていそうだった。開演まで10日切ってからのキャス変の演技とは思えん。

リリーは割と聞き手というか、深く関わらなかったかな。不死のことバレてないしね。しかしこの出来事はリリーにどんな影響を与えたのだろう。少しは自分を許せる方に傾いたのか、それとも。

「不可能」という花言葉の花がTRUMP界にも存在するのは、凄まじい「希望」をぶち込まれた気分になった。末満さんだったらこれを書いただろうかという一抹の違和感はある。

 


3. 静かな村の賑やかなふたり[作・岩井勇気

孤立した人間種の村の言い伝えの話。恋人のベルナールに会うため道を急いだアドレーヌはリリーと衝突する。手を怪我したリリーの傷の再生を見たアドレーヌはリリーが吸血種だと気付く。アドレーヌはやってきたベルナールと共に吸血種にまつわる村の言い伝えを次々思い出すが、それは全て的外れなのであった。

 

漫才である。雨下と同じく3話目がギャグ。

まず先にベルナールが出てくるけど癖強すぎて出オチだった。上原さんも大概振り幅デカい。ソーシャルディスタンスキッスは笑った。コウモリ飛んでっちゃうのも笑った。

吸血種こわいのうたは、またケリトン出版社みたいに図らずも1位になってしまいそう曲である。

 

4. 血と記憶[作・末満健一]

ラッカとノクとの再会の話。リリーとの別れから20年後、血盟議会に入ったラッカとノクは不死者リリーの捕獲部隊としてリリーを追っていた。坑道を逃げ回るリリーは出口でラッカ、ノクと再会する。ラッカはリリーに辿り着くために血盟議会そしてヴラド機関に入ったのだった。「一緒に逃げて、また家族になろう」と言うラッカだが、リリーはラッカを噛み、ラッカの中からリリーの記憶を全て消した。その最中部隊の一人であるヴァンパイアハンター ガビーが仕掛けた爆薬により坑道が崩壊。ラッカはリリーが突き飛ばしたおかげで助かったが、ノクはリリーが覆いかぶさってもなお岩の下敷きになり即死する。それでも生きていたリリーの血は再生を試みつつ地下水脈を通り、川を通ってゆく。その最中、再生中、ノクの血が混ざっていたせいかノクの意識がリリーの中に残っており、ノクはリリーにラッカを救った礼を述べた後、「ラッカに記憶を戻してやってくれ」と告げる。リリーは夕焼けの海で完全に再生する。

 

突然のラップ。ガビーは三好さんなんだけど、キャス変したと思えないくらい妙にマッチしてた。いやでもこのラップのアイクさんも見たかったな。しかし黑世界のヴァンパイアハンターろくな奴いないな。

ここの上原さんはよく見る感じのカッコいい上原さん。ノクは元より血盟議会志望だったけど、ラッカのことが好きなのは1話で語られてて、ラッカを守るためにラッカと同じ部隊に入ったのかな。何だか「ラッカのことは好きだ。リリーのことも好きだ」的な最後の言葉が、ラッカも"家族としての好き"のように聞こえたけど、結局どうだったんだろう。

朴さんと上原さんが歌った時レミゼ…となった。ラッカとノクの曲の時の照明が印象的で、私が見た位置からだとお互いが格子の中にいるようなライトだった。

リリーの再生モーションがぐにゃぐにゃで。ぐにゃぐにゃのぐちゃぐちゃ。原型を留めないほどの肉片…はSPECTERの萬里くんの最期を思い出すな。あのグロテスクな状態がこの美しい少女に何度もあったと思うと、あまりのギャップに寒気がする。それでもリリーという花は綺麗なまま。

 

5. 二本の鎖[作・来楽零

恋人同士である上流階級の娘と使用人の息子の話。18歳になる繭期の少年アントニーと繭期の少女フィロは二人だけで森の奥で暮らしていた。アントニーの繭期の症状は重く、自傷を伴う自己嫌悪だったが、フィロの症状は比較的軽かった。かつてフィロを愛してしまったアントニーは、フィロのイニシアチブをとり「僕を愛してくれ」と命じたことをリリーに吐露する。しかし実際にはイニシアチブがなくともフィロはアントニーを愛しており、フィロもまたアントニーのイニシアチブをとり「私から離れないで」と命じていたのだった。

 

脚本、すごいもん考えるわ2。青い薔薇の教会といい、メンタルの輪廻構造には感服しがち。

これもリリーは聞き手。アントニーに対する「人の心を操って思い通りにする…最低ね」という言葉は自分も対象だよね。どうして自分で自分を傷つけるようなこと言ってしまうのか。誰も許してくれないし自分も許せないから、自分で自分を罰しているのだろうか。

繭期を終える年頃の吸血種は何だか新鮮だった。今まで「いい歳して繭期」含めて吸血種、繭期だらけだったから。ほとんど繭期のまま死んじゃったから。本当はちゃんと終われるものなんだよね。

 


6. 百年の孤独[作・末満健一]

リリーとラッカの終わりの話。ノクが死んでからラッカは100年生きた。幸せな人生だったが、ぽっかりと抜け落ちた記憶がある。それだけが心残りであるラッカの元に訪れたリリーは、ラッカに自身の記憶を戻す。「あなたは一人じゃない」と言い残し、ラッカはこの世を去った。リリーの意識下にいたノクもまたそれを見届け、完全に消失した。

 

ラッカが一途すぎる。一緒に暮らした5年間でどうしてそこまでリリーを愛せたのか。そして4話でもうリリーとラッカは二度と会わないと思ってたから最後の最期にちゃんと記憶を戻したリリー、なんて良い人なのかと思った。ラッカが自分の存在をこれ以上追って苦しまないような、ノクとの約束も守れるような選択をしたんだね。

ラッカもノクのことが恋愛対象として好きだったの切なすぎる。両片思い。幼い恋心的には一緒に暮らせていれば良かったんだろうけど、それが大人になっても変わらずそうであることは、あまりにも尊くないか。

『少女純潔』聴けると思わなかったな……………。かつて同じ劇場で同じ曲を鞘師さんは聞いていたんだなと思うと、サビでちょっと泣きそうになった。少女純潔の時の照明が神がかってて、客席天井が星空になっていて、それはそれは美しかった。思わず舞台から目を逸らして見上げてしまったほどに。現地に行って良かったと本気で思った。歌詞も少し違っていたね。

リリーはソフィにはなりたくないけど、ソフィと同じように星に手を伸ばす。

 

 

 

 

リリーの性質を生かしている話が多いという理由で、雨下のが好みかな。多分日和のが泣けるんだろうけど、今回涙を流すには至っていないのでどちらとも言えず。

チェリーはリリーの幻覚なわけだけど、思考回路が剥離してるような思想の違いはやはり繭期のせいなのかしら。

ヴラド機関、不死者について割と何人もいるような物言いだったけどクラウス、ソフィー、リリー以外にもいるのかしら。深読みかもしれんが謎深まる。

 

何となく、末満さん以外の脚本は"純粋な希望"の話が多かった気がする。救いがあるというか。

末満さん脚本は…どうだろう。雨下日和それぞれの100年間を描いた一本の話になっていて、どちらもリリーが有限の命の吸血種と深く関わる。シュカもラッカも死に際に救いがあって、一見希望の話に見える。でもリリーにとってはどうかと考えると、彼らの死によって、悲しみを抱えたまま生きるリリーの世界はより黑く染まったのではないかと思うのは私がひねくれてるのか?

ただ、星=死の比喩であると考えると、見送る星が増えるほど夜空は美しくなり、黑い世界が深まるほどまた夜空の星は美しく輝く。

 

満天の星空は、リリーの心を癒してくれるのだろうか。

美しく咲く花はいつか星になれるのだろうか。

 

 

 

 

 

★★★

*1:雷山でした。

*2:どうやら初日だけ日和のスモーク無かったようです