芸術に拍手

全記事ネタバレ祭り。レポと感想と妄想が大渋滞起こしてる。

ミュージカル シデレウス

 

ミュージカル『シデレウス』

2022.6.17-30  自由劇場

修道女マリアは、父親のガリレオから自分の部屋に隠してある手紙を燃やしてほしいという、一通の手紙を受け取る。
その手紙の差出人は全てケプラーという聞き慣れない名前であった。
太陽が地球の周りを周回すると信じられていた1598年、数学者でイタリアの大学教授でもあるガリレオは、ドイツの数学者ケプラーから「宇宙の神秘」という一冊の本とともに宇宙への研究を提案される。
ガリレオは一度は断ったものの、粘り強いケプラーの説得により、彼の仮説が間違っていることを証明するための研究を行う。
そうした中、言及することさえもタブー視されていた「地動説」の論拠を示せば、とんでもないこの仮説が正しいかも知れないという結論を下すことになる。

http://musical-sidereus.jp  ※音出るので注意

 

 

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6.22夜(ペルセウス)  11列上手寄り にて*1

 

 

 

 

友人の招待で観劇。科学、特に天文学が好きなのでまず題材で気になってたし、井澤さんのビジュ良いな……と眺めてはいたし、HPで流れてる音楽良いな……とは思っていたけど、まさか実際行くことになるとは。関係ないが今回電子チケで、しかし私はチケットの半券保管するタイプなので110円払ってでもチケット発券したい。

自由劇場初めて来た。入口からお洒落の塊でビビった。規模は小さいけど、こんなオフィス街にこんな素敵なとこあったんか。

入場時に「パンフレットお配りしてます」と小冊子渡されて戸惑う。なんかガリレオの史実やらがびっしり文字書いてあるけど、無配でいいんですか…!?

 

 

 

 

これが運命の出会いというものか。

観られて、本当に本当に良かった!!!友人大感謝!!!

天文学好きにはたまらない舞台。ダンスはないし派手なマンパワー的な演出もないけど歌に特化してて、ミュージカルとしての質がものすごく高い。キャストは3人だけであるところもシンプルで良い。もっと評価されるべきだし*2、もっと沢山の人に浴びてほしい。なんか、もし小学生くらいの子供に舞台見せるとしたらこういう舞台がいいな、と思った。

これ韓国発のミュージカルなんだそうだけど、激ヤバどエモーショナルミュージカル「フランケンシュタイン」も韓国発だし、もしかして韓国にはまだまだヤベェミュージカルが沢山あるのか……?

 

ガリレオ・ガリレイと地動説の関わりは史実的には少し辛めの終わり方なんだけど、シデレウスではそれでも希望が持てる終わり方で、観劇後すごく気分が良かった。あとお腹空いた(良い演劇を観ると腹が減る法則に則っている)。

研究が進んでどんどん新しい真実が見えてくることでガリレオケプラーが爆発しそうな程キラキラしていく過程が最高だったし、確実に深まる信頼関係が眩しくて、熱くなった。

唯一手紙の返信をくれたということで一方的に懐いて(?)くるケプラーに最初は否定的だったガリレオの心情変化も良かった。地動説を証明する研究結果の書籍の名前をどうするかというシーンで、「Sidereus Nuncius」を提案したケプラーに「子供っぽい!」という割に採用するガリレオは可愛い(ガリレオは「galassia…?」とか悩み呟いてた)。人々から賞賛されると確信した時には「ガーリーレオ!ガーリーレオ!」とか自分で煽ってたけど、あれ台本通りの台詞なのかな笑。「どこからいらしたんですか?」とか最前列のお客さんに話しかけてたりしたのは井澤さんの裁量なのか微妙に日替わりなのかも不明。

後半には共同研究なのにケプラーの名前が残せないことに罪悪感を感じたり、出版した本が異端扱いされるようになると「ケプラーは関係ない」等と全て自分で抱え込もうとするのがしんどいし、格好良かった。ケプラーガリレオの自宅を訪ねて初対面を果たした時のケプラーの「意外とお若いんですね」の冗談が可愛らしいし、非難を浴びることを分かっていながら地動説は共同研究であると、一緒に責任を負うと言うところがもうね…。

このままでは火炙りの刑で殺される、生きてこそ伝えられるのだから全てを捨てて逃げようと言うケプラー。最初はガリレオが「危険だから止めた方がいい」と言っていたのに、ケプラーの情熱に押されて研究が始まった。それがいつしかガリレオが「もう止められない」と言い、ケプラーが止めるという逆転構図になっているのも面白かった。

ケプラーガリレオを抱きしめるところ、こういう展開って大体予測できるんだけど、ここはなんだか抱きしめ合うような間柄には見えなかったから、完全に不意をつかれた。役者は稽古で何度もやってるだろうに、本当に今初めて抱きしめたかのような感覚になった。

マリアは研究の外側の立場であり、修道女として神を信じる=天動説を信じる立場だったけど、一貫して父を大切に思う気持ちは変わらない。宗教裁判では修道女でありながら、「地動説は神の教えを否定するものではない。天動説も聖職者の一つの解釈に過ぎないのではないか」と父を擁護する主張をする、強い人だった。

ガリレオケプラーもマリアも、人として本当に魅力的なんだよね。悪意がある人がいないのが、すごく気持ち良く観られた理由の一つかもしれない。

ガリレオは地動説を主張しないと誓って刑を逃れたけど、その後のケプラーからの手紙が、物語序盤のような最敬意を示す書き出しから始まるのがグッときたし、さらにそこに書かれたケプラーの新しい仮説が地動説のそれで。真実を追究する志の継承と、信じてくれる人の存在に、救われる気持ちになった。

今でこそ聖書至上主義かつ天動説の思想の方がおかしいと思えるからガリレオケプラーのことを好意的に捉えられる。でも逆に、今の常識と真逆のことを主張する人をおかしいと思わない自信はない。私も理系の人間なので常に事実や証拠を重視しているが、未知の領域について「まだ見るべきことは残っている」というのは心に留め置きたい。

 

 

情熱のペルセウスチーム、すごいパワフルで生命エネルギー浴びた!ペルセウスの唯一の金髪コンビ良いな………ちょっと日本人感薄れて横文字名が似合う………。

ペルセウス以外のチームだと絶対雰囲気違うだろうから別チームも観たい気持ちと、ペルセウスの記憶を唯一のものにしたい気持ちで悩んだ。さらにペルセウスをもう一度観たい気持ちもあって、あと10回は生で観たいと思った。

特にガリレオケプラーは110分ほぼ出ずっぱりですごい。これだけ出番あって歌もあるならそれなりに時間かけて稽古してるだろうに1チーム4公演しかやらないの、勿体ないというか贅沢というか。

てかよく見たら、ガリレオケプラーのインナーとかマリアのディテールとか、衣装もチームによって違うじゃん!個性~~~!

 

舞台セットがすっごく素敵!!今までで観た舞台の中でもトップ3に入るくらい好きな舞台美術。劇場規模にしては大掛かりで、キャスト3人という少人数だからこそ組めるセットなんだろうなぁ。

センターの半円のオブジェに映像投影する演出、どこかの宇宙科学博物館を思い出した。

自由劇場そのものの雰囲気も題材や時代に合ってて、そこでやるべくしてやった、って感じがした。シデレウスが常設のセットですと言われても納得する。

 

曲が本当に良い。曲がさぁ…ほんとに曲がさ…、って言ってしまうくらいには良い。アップテンポなのが多くて、辛いシーンでも気落ちはしないというか、負の「エネルギー」が感じられるというか。

ガリレオケプラーの研究が大詰めになってきた頃の曲がすごくワクワクできて大好き。ケプラーの余白の歌(余白の歌…)もすごく好き。希望に満ち溢れた曲、得意か?

ペルセウスが3人とも歌上手すぎて、ユニゾンもハモリもすっごい映える。聞いてて単純に気持ちが良い。

 

井澤さんのビジュが生だとより天元突破してたし、気難しくも真実を追究する学者的な面も、科学が好きな少年のような面も、娘を守る父としての面も、美味しすぎた。客席に背を向けて椅子に項垂れるシーン、終盤ですごいシリアスなシーンだったのに咄嗟に「は?脚長。」と思っちゃった。ハイウエストの良い衣装でしたね。マリアの手を取って跪いて「主と共にあらんことを」みたいなこと言うシーン、宗教画か?ってなった。

吉田さんのケプラーは可愛すぎた。最初はガリレオに対して下からで、でも全然押し負けない強さもあって。ガリレオを呼び捨てにし始めた頃からのケプラーは、やっぱり敬語だけどしっかりワンコが抜けて対等な友人としてのケプラーになってて良かった。あと歌の安定感がヤバい。歌が上手いって色々あると思うんだけど、帝劇で聞いてるのと同じだあ(小並感)という感想。アフトのハイテンション関西弁のギャップがヤバくて笑ったんだけど、司会進行で持ってるファイル、最早何の進行が書いてあったん?レベルでフリートークで、さらに笑った。

礒部さんはロイスキャぶりだったんだけど、マジで歌声がディズニープリンセスなんよ………歌唱一発目、鳥肌たったわ………。プリンセスだけど高音めっちゃ強いの。しかも可愛いの、もう最強か?アフトではアホやってる男子を冷静に遠目で見つめる女子ポジで最高だったし、あんなパワフルな歌と情熱的な演技するのに素はお淑やかで、ここもギャップか~、役者こわいな。

 

 

 

6/22夜アフトのゲストは未発表だったのかな?演出家の田尾下さん。ミューマギから2連続で演出家さんの生トークを聞けてしまった。

上手からヤバいテンションで飛び出してきた男子2人が、なんか始終距離近い(全く邪な意味はなく、ゲスト含めた4人の間の距離の比率1:2:2くらいだった)。上述の通り吉田さんがめっちゃ関西弁で、井澤さんと漫才みたいになっとる。

田尾下さんが上手から出てきた時、礒部さんが「なかまが来た…」(冷静仲間?)って呟いてたの面白かったし、井澤吉田の「俺たちも仲間じゃん!!」に対して「仲間、だった…」って返しも最高だった。

・井澤さん「男性のお客様も多いですね」礒部さん手を振る。井澤さん「(手振り返す客席に)ちょっと、気軽に手振るんじゃないよ。ウチの娘なんだから」

・礒部さん「楽屋が階すら違うんですけど、ヘアメイクしてたら何故か2人(井澤吉田)がメイクルームまで来て目の前でコントしてくる」

・吉田さん「めっちゃ(シデレウスで)エゴサする」井澤さん「友達に和合真一っていうやつがいるんだけど、和合、わごたん、わごちゃんetc.全部のあだ名でエゴサしてる」

・田尾下さん「3人ともすごく素直。今トークしてる吉田くん(呼び方違うかも)なんか全然違くて、何言っても『はい。はい。』と言ってくれるもんだからいつ自分に対しても砕けてくれるんだろう…と」井澤さん「人見知りだもんね。人見知りする人に人見知り」吉田さん「本当はこんな感じなんです」

・井澤さん「田尾下さんは初めてご一緒させていただいたんですけど、前に丘山晴己っていう役者から『いや哲さんめっちゃ良いよ』って言われてたから相当良いんだろうなと」「稽古場動画上がるけど毎回田尾下さんの後ろ姿越し。すごい、指揮者みたいな動きしてくれる。こんな熱量持って演出してくれる人なかなかいない」ちなみに6/22夜公演、丘山さんご観劇だったそう。

・井澤さん「さっきから文字数Twitterのツイート埋められないくらいしかマリアが喋ってない!」礒部さん「え……どうしよう(普通に困る)」

・吉田さん「シデレウス4チームで、自分たちの強みを言わなきゃだったけど、田尾下さんから見たペルセウスの強み、聞きたくないです?」田尾下さん「"情熱"。チームで一番舞台上散らかしてる。終盤のシーンでマリアが引き出しから小道具の紙出さなきゃいけなくなるかも~くらい散らかしてる笑」「今日もマリア床から拾ってたもんね…」ガリレオケプラーの手紙を取っておいたことに言及するケプラーのセリフでも、決して丁寧な取っておき方ではないのでその状況によってセリフ変えたりしているらしい。6/22はガリレオは最前列にまで紙飛ばしたしケプラーの眼鏡も吹っ飛んだ。

 

 

 

スケジュール的に生でもう一度行くのが厳しいんだけど、もうずっとシデレウスのこと考えてる。チケットタダで貰って行った舞台だけど、自分でお金払ってないのが気持ち悪すぎて絶対自分でも還元します。

「再演したら絶対観に行く」舞台が増えました。

 

最後に、心に火が灯るような大好きな台詞。

「できるよな?

    もちろん!」

 

 

 

 

 

★★★★★

*1:389年前の1633年6月22日はガリレオ・ガリレイが宗教裁判で「それでも地球は回る」とつぶやいたとされる日だそうな。

*2:韓国では評価されてる