芸術に拍手

全記事ネタバレ祭り。レポと感想と妄想が大渋滞起こしてる。

文豪とアルケミスト 嘆キ人ノ廻旋

 

『文豪とアルケミスト 嘆キ人ノ廻旋』

2022.

9.2-11  品川プリンスホテル ステラボール

17-19  森ノ宮ピロティホール

文学作品を守るためにこの世に再び転生した文豪たち。幾度となく侵蝕者と戦ってきた芥川龍之介は、同じ新思潮で親友の菊池寛らと再会。

喜びもつかの間。なんと彼の師である夏目漱石の『こころ』が侵蝕される事態に。一刻も早く潜書し、侵蝕を食い止めなければならない。しかし同じ夏目門下である久米正雄が芥川との協力を拒み、散り散りで潜書することとなる。

敬愛する師の作品に足を踏み入れてもなお、手を取り合えない二人。菊池や江戸川乱歩の応戦もかなわず侵蝕者によって窮地に追い込まれるがエドガー・アラン・ポーとハワード・P・ラヴクラフトの活躍により浄化成功。図書館で待つ、室生犀星と夏目の元に帰還する。

海外文豪らの武勇を称え、生前の作品について花を咲かす面々を横目にかつての同志であった芥川らだけでなく、異国の文化を持つ海外文豪らを受け入れられない久米と周囲との軋轢は大きくなるばかり…。

そんな最中、突然姿を消した久米。時を同じくして『破船』が侵蝕された。とてつもない負に抗いながら、潜書を試みるも久米の意思を形にしたかのような結界に拒まれ――

 

 

9.7夜  I列上手寄り にて

 

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文劇5作目にして初の生観劇だった。私は初演から芥川先生がめちゃ好きなのだが、今回主演ということで、いよいよ行かなければと思い。相変わらず原作未履修ミリしらなのでキャラ解釈は文劇時空の話になります。

元々最速先行でチケットとってた9/7ソワレが、偶然なるせさんと吉谷さんのアフト回になってラッキーだった。ミューマギでも偶然吉谷さんがいるアフト回で、吉谷推しとしては有難い限り。

6回リピーター特典の、演出メモ付き台本が欲しすぎたけど、レボライで6桁飛ばしてる私は無力であった。リピーター列もすごかったと聞いて、まだ観てないのにチケット増やすか本気で悩んだけど、無限の貯蓄を持たざる私は無力であった。

 

ステラボールが、神段差。1階席最後列が2階席に達しかねんくらいの段差がつけられてて最高すぎた。特に今回I列が段差開始列で、もー最高の視界。ヘタミュWWとこの文劇5でしか来てないが、あの悪名高きステラボールと私が知ってるステラボールは別劇場なのだろうか。

前アナはやっぱり吉谷さんですが、これなんで吉谷さんがやってるんだろうな……誰がやる?俺がやる、ってなるのかな……。

 

 

いやーーーー良かった。2時間ない舞台、久しぶりに観たけど「これ2時間もやってないの!?」と良い意味で長く感じた。身体的にもちょうどいい。文劇5、「対話」の話であり、会話劇っぽいところがあるなと思った。それでも演出が多彩ゆえに飽きずに観られる。逆に「待って!?情報量が多くてセリフが頭に入ってこない!!」ってことも何度かあって焦る。海外文豪のバーのシーンなんて、ラヴクラフトがお菓子(?)食べまくって、お皿山盛りのおかわりして、壺にお菓子ぽとぽと入れようとして床に落とす、のを見ているだけで脳みそキャパオーバーした。

ストーリー、創作する人には我が身のように理解できる話が詰まっていて私はすごく刺さったんだけど、創作しない人はどう感じるのか気になった。

文学は自らのために書くものだという久米と、文学は大衆に楽しんでもらうために書くものだというポー様。創作者のスタンスの違い、知ってる……知りすぎている……同人界でたまに発生する学級会にも、そういうのあるよ……。私はどちらかというと自己満で創作する久米寄りなんだけど、結局どっちもあっていいし、どっちもあるべきとも思う。多様性信者なので。

負の感情が創作のエネルギーになるってのも、本当にそうとしか言いようがない。私が一番絵を描いていたのは受験の時期だった。負のエネルギーを周りが理解して、あれだけ鎖国してる久米を尊敬したり「それが良さでもある」とポジティブに捉えたりしてるの、深くて優しい世界だよなあ。

また全員に言える話として、おはなしがハッピーを生むんだっぴ!って感じだった。基本みんな「言葉」で解決しようとするのが良いよね(侵蝕者には思っきし「「「パワー」」」だけど)。特にポー様は唯我独尊かと思いきや、歩み寄りの姿勢を見せるので、良い人じゃん……てなった。

 

舞台美術のステンドグラスが、照明の色によって混色して全然違う色に見えるのがすごく良かった。赤と緑と青の、光の三原色を使ってるのは理由があるのかなあ。

また机と椅子で「書く」動作があったのも良かった。文豪の話なのに、今まで一度もなかったからね。

 

燃え落ちた布で「こゝろ」の文字書くのめっちゃ良い。あと芥川が自分の本燃やすシーン、炎マジで燃えてるのすごい。軽く小火。今回、煙草含めて「炎」の描写が多い気がするな。

煙草嫌いだけど、煙草を吸う所作には狂える。菊池も煙草フレンズで有難い。

文劇4で気になった「お着替えタイム」も、今回全然気にならなくて良かった。芥川先生に新衣装あるの知ってたのに、忘れてたからホントに死亡エンドかと思ったもんね。しかし「なんかよくわからんが復活した」流れは一瞬、ご都合すぎん!?と思ったけど、ポー様のありがたいご解説の一言で、そっか~~~ともなった。

 

今回、音楽にtakさん入ってないのが悲しかった。そのせいではないはずなんだけど、主題歌がどうもテンション上がりきらず。勝ち確ソング(主題歌)が流れるタイミングが物理的な戦い終了後だったのもあるかも。対話も戦いである、と考えればあのタイミングの主題歌も勝ち、なのだが。まあ何回か見たり歌詞読み込んだら、印象変わるんだよな、絶対。



 

ラヴクラフトの武器がフラフープみたいなの、単純なのにデカくて派手で良い。というか操作してるブルズが凄い。ギュンギュン回るし回すしもうどうなってんの。

久米の剣も先端がUターンしてて、振り抜いても引いても引っかかりそうで扱いづらそう。なんやねんあの剣。裁縫道具にありそうだな。

 

 

今回キャストみんな身長デカくない?乱歩がラヴクラフトのパーソナルスペース限界突破した時、「あれっ乱歩ちっちゃっっ……???180?あったよね???」ってなった(ラヴクラフト小林涼187cm)。

キャスト年齢的にも、キャラクターチョイス的にも割とアダルティーだよね。そう考えると今回の主題歌は大人っぽさが合ってるか。

 

今まで映像でしか見てなかったから、生芥川先生が見られて感激した。映像より10000倍美しゅうございました。

しかしとにかくほんとーーーーーーーに、久保田秀敏さんの殺陣があまりにも美しい

殺陣の上手下手とかあまり思ったことなかったけど、「太刀筋が綺麗」ってこういうことかと否が応でも解らせられたし、「剣舞」というものが存在する意味を、ようやく肌で理解した。剣を振るっているのに「舞う」と感じることって、あるんだな。なんかもう、くぼひでさんの殺陣は「神に捧げられる舞*1」なので、舞台という非現実空間が神性を帯び、より一層リアルな非現実になるんだよな……(分かってくれこの感覚)。他見ようと思っても、一瞬すら見逃したくなくて結局芥川先生見ちゃう。ずっと見ていられる。この殺陣専用に金を払わせてくれ。

そしてこの方、やられの殺陣もめちゃくちゃ上手いんだよな。散る汗すら美の演出のようで、舞の神に愛されたんか?っていう。久米との対話のシーンで汗ぽたぽた落ちるのがはっきり見えるくらい汗かいてるのに、顔は涼しいから、難なくこの殺陣ができるものだと勘違いしてしまう……これはくぼひでさんの努力とセンスと背筋*2の賜物よ……。「破船」に潜書するシーン、ゴリゴリのパワープレイでめちゃくちゃ好き。ギャップありがと。

あと芥川先生、時折ゾッとする目をする。今回も(どこだったか忘れたけど)、視線で感情を突き刺してくるような瞬間があった。文劇初演の闇堕ち振り返りの芥川先生の目もめちゃくちゃ好きなんだよな……。

芥川先生のアホ毛がみょんみょんしてるのを見られるだけで5000円、芥川先生のおタバコすっぱすっぱを見られるだけで30000円、芥川先生の剣舞を見られるだけで1000000円、ってとこですかね。

 

乱歩、今までは他の文豪たちから少し俯瞰したような立場だったと思ってるんだけど、文劇5では強い関係性があるポー様がいたことで、ぐっと人間的な深みが増した感じがした。結構印象変わったかも。ちょっと太宰ポジもあった。帽子脱いだ後の戦闘はかっこいいと言わざるを得ない。

 

 

続きやりそうだから、また生で観たいなあ。

 

9/19追記

やっぱりやるじゃん続き!相変わらず新作発表がオシャレ。

 

 

 

 

 

9/7ソワレの、脚本なるせゆうせいさんと演出吉谷晃太朗さんのアフタートーク、覚えてるとこだけ。

 

2人ともガンガン切れ目なく、話の繋ぎもスムーズに喋るから、普通にあと2時間のトークショーあります?って感じだった。

・「芥川の殺陣、綺麗だよねー」となるせさんが言った時、客席が赤べこになってたのがおもろかった。ほんとそれ。でも前日のアフトで本人は「今回舞台(アクティングエリア)狭い」って文句言ってたとか笑

・舞台美術のステンドグラスは吉谷さんが考える「純喫茶」。あえて机と椅子を置きっぱなしにして、創作の現場としている。

・今回の吉谷さんの裏テーマは「和合真一のファンを増やす」だったとか。「お目見えですよ」の言い方とかで惚れさせるように指示してた。

・なるせさん「寿里、いいな、と思った。ヘタリアのイメージあるから笑  大人で繊細な役良かった」吉谷さん「そうなんですよ、寿里、いいんですよ」

・企画会議でどの文豪出すか検討してて、芥川メインでいこうとはなってたけど、そこから夏目漱石に関連して海外文豪出そうってなった。最初はドストエフスキートルストイが挙がってた。けど乱歩が出るってなって、ポーとラヴクラフトになった。

ラヴクラフトの武器が謎すぎて、企画会議で「ラヴクラフトはやめませんか?」と言いかけた吉谷さん。現場入る直前まで悩んでた。「新体操みたいになってるもんね」「動けるブルズが頑張ってる」

・芥川と久米の話は文劇1でも少しやってるから、そこをまたやるのはどうなの?という話もあった。

・世界観監修のイシイさんは、なるせさん吉谷さんの舞台の作り方も分かっていて、会議ではすごく良い感じにやってくださる。

・芥川と久米の回想シーンを、吉谷さん自身が久米でやってみたらほんとに泣きそうになった。

・なるせさんが脚本書く時は憑依型ではない。吉谷さん「えっ、ふーんって感じ?笑」なるせさん「いやそんな冷たい人間では笑」脚本書いてると、勝手に声が聞こえるらしい。

 

 

 

 

 

 

★★★★

*1:くぼひでさんは重要無形民俗文化財 豊前神楽の舞手です。

*2:最強スポーツ男子、7年前ってマジ?