芸術に拍手

全記事ネタバレ祭り。レポと感想と妄想が大渋滞起こしてる。

ヴェラキッカ

 

『ヴェラキッカ』

2022.

1.15-23  東京建物 Brillia Hall

2.2-6  COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

ようこそ、秘密に覆われた荘園へ
TRUMP流「人間愛奇劇」、開幕。

 

名門貴族ヴェラキッカ家の当主ノラ(美弥るりか)は、遠縁の親戚であるシオン(松下優也)、異母弟のカイ(古屋敬多)、シオンの妹ジョー(愛加あゆ)、家庭教師のロビン(宮川浩)、執事のウィンター(西野誠)ら一族の仲間や、クレイ(大久保祥太郎)、マギー(斎藤瑠希)ら養子たちに囲まれて暮らしていた。ヴェラキッカ家の吸血種たちは、全員がノラに強烈なまでの愛情と執着を見せる。そこに新しい養子であるキャンディ(平野綾)が迎えられる。ノラを巡るマウントゲームにキャンディが巻き込まれたことから、ヴェラキッカ家の秘密が暴かれていく。

https://verachicca.westage.jp

 

 

 

 

1.16夜  1階H列下手

1.22昼  1階H列下手    にて

 

 

 

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※今後ヴェラキッカ見る予定ある人は絶対読まないでください

 

 

 

 

 

めーーーーーっちゃくちゃ良かった。

この作品は多分、映像では難しいのよ。一人多役が当たり前に行われる演劇だからこその、演劇が一次創作でなければならない作品。さらに脚本演出を兼ねてなきゃ出てこないストーリー。演劇の性質を極限まで駆使した演劇だよこれ。

 

末満おじさんが二番煎じをやるわけないのよね。そう分かってたのに、一幕時点でLILIUMを意識せざるを得ない構成。展開予想が頭を駆け巡る幕間。こんなに脳フル回転で先を予想しながら観た舞台は初めて。「初日開演数時間前にLILIUM再演の告知すな……(情緒がイカれたままヴェラキッカ観るの無理だから初日入ってなくてよかった……)」と思ってたけど、全てミスリードなわけ?TRUMPシリーズって、ミステリージャンルでもあることに今更気付いた。

人の「肉体の死」と「記憶の死」の狭間を、吸血種の特殊設定で突いているのがすごい。設定ひとつでこんなにも面白い。もうTRUMP世界に生きてなきゃこんな話出てこないでしょ。創作世界の神はすごいなぁ。

 

 

全然関係ない話で申し訳ないが開演の鐘の音でメサイア思い出してしまったのは私だけでいい。

舞台美術がハートまみれで、なんというかブリンブリンだな……と思った。ハートマークの発祥ってどこなんだろう?いつどうして世界共通になったんだろう。TRUMPにしては俗っぽいなと思ったのは、ハートマークは現実世界の暗黙の了解的記号だからかもしれない。

 

ミュージカルとしての完成度が高すぎる。帝劇でやれ。なんだかディズニーやグランドミュージカルを彷彿とさせるナンバーや魅せ方で、ミュージカルの最終的な到達点みたいなものを感じた。

そういえば(正直に言うと悪名高い)ブリリアホールは初だったんだけど、思ってたより悪くなかった。音響も、2回ともほぼ同一席だったから比較できないけど歌詞ほぼ聞き取れたし。役者と音響さんの努力のおかげかしら。

 

キャンディス・ベイカ平野綾さん、さすが声が良すぎる。開幕から放たれる第一声から、掴まれた。涼宮ハルヒの頃から知ってるが、舞台で観るのは初かも。高くても耳馴染みが良い。

シオン松下優也さんは生執事リコリスぶり。相変わらず声が甘ぇ~~~。耳に粉砂糖振りかけられとるんかってくらい甘ぇ~~~。

カイの古屋敬多さんは初めて見る方だったんだけど、シオンと声質が正反対で面白かった。あと顔が小せぇ~~~。私の握りこぶし分しかないんじゃないのってくらい顔が小せぇ~~~。

 

美弥るりか様を起用した理由が、納得と理解を超えて、もはや必然であるとすら思う。始終役が男性か女性か分からないという人間としてほぼ体感しえない"状態"を、当事者としてこんなに完璧に演じられることある?

何より、あれだけ髪型・髪色・衣装を変えてもなお「ノラ・ヴェラキッカ」で在るのが分かるのがエグい。半分以上の観客は役者の表情が見えない距離にいるのに、「ノラ・ヴェラキッカ」を"外見/シルエット"ではなく"美弥るりか"で認識させる存在感、エグすぎる。我々はるりか様の魂の形が見えとるんか?

 

ノラの性別「決めてない」じゃなくて誰も「分からない」のが心の臓まで刺さった。これ本当に"演劇"の妙だよ。舞台観てると稀にこういう、演劇の性質を知り尽くしたがゆえの技術みたいなのが見られるからシャブなんだよな。

 

 

今回、あまり他の作品の予習が必要でなくて観やすかった。初繭期にもおすすめしたい。

関係ある固有名詞はマギー・デリコくらい?今後出てくるのかな。

 

初見と2回目以降で全く見方が変わって、実質別作品のようだった。初見では全く泣かなかったのに、2回目で爆泣きしてしまい自分で自分に驚くほど。1回目大丈夫だったから油断してハンカチ持ってなかったじゃん。

初見は物語展開と初めて見る景色に頭がいっぱいで、感情をねじ込む隙間がなかったのかもしれない。こんなところで己の脳内キャパを知る。2回目はシオンがカイを噛んだ、「愛されるために戻ってきた」の辺りから8割泣いてた気がする。

ノラとシオンが初めて(幻想の中で)会うシーン、スポットライトの中にいるシオンにちょうどスモークが到達した瞬間、ノラが現れた。その瞬間がまるで、吹けば飛ぶような存在のノラがそっとシオンの背を撫でるように見えて、また泣いちゃったよね。

 

メリバだし、故人を弄ぶようでもあるよなと思いつつ、私はとても優しい作品だったなと思った。観劇後、ただただ「良かったなぁ」と思える舞台だった。

 

 

 

あーーーヴェラキッカの記憶を完全になくしてもう一度初見になりたい。

 

 

 

 

 

 

★★★★★